第2話山登り
山の近くに自転車があるとバレるので、少し離れた、人目が付きにくいところに自転車を止めた。自転車を止める場所も、バラバラにしているので、三人の入らず山登りへの真剣さが分かった。
三人とも、入り口を知らないと言っていた。だから、入り口は、目立たないようにしていたり、木々が生い茂っていたりなどで、分かり辛くなっていると思っていた。しかし、入らず山への入り口は、分かりやすく、そこにあった。
山に入るまで、三人は口を閉じていた。話声で、人に見つからない為だろう。山に入ってからも、暫くの間、無言で歩き続けた。
「あー、山の中って、結構涼しいんだな」
「木が生い茂っているからかな?」
田中君が話始めると、それに続いて鈴木君も口を開いた。二人が話始めると、それまであった、暗い雰囲気が薄れていく。
「涼しいのはいいんだけど、暗いよねえ」
麻子ちゃんの言う通り、肌を焼くような強い日差しが、木々に遮られて、山の中は薄暗く感じられる。帰りが何時になるのか、分からないけど、暗くなったら危ないだろう。念の為に持ってきた懐中電灯を、使う様な事にならないと良いけど。
話に聞いていた通り、入らず山には道があった。二人並んで歩くには、狭い道だけど、山の斜面に対して不自然に平たくなった地面が、山の奥へと続いている。途中、道の上に倒れた木があったけど、跨いで通る事ができた。
「なんか、普通に登れるな。蛇とか熊出るって言ってたけど、出そうにないし」
田中君は不満そうだった。確かに、危ないのは嫌だけど、危険な山と言われているのに、危ない所は今のところ無い。道には草が生えていないので、蛇がいても、噛まれる前に気付けるだろう。熊が出ても、この狭い道を、追いかけては来れないと思う。
「いや、まだ、登山の途中だから。この先に何があるか、分からないだろ?」
そう言った鈴木君も、田中君と同じように、つまらなそうにしている。麻子ちゃんも、山登りに飽きてきている感じだ。私自身も、さっきから何度も、時計で時間を確認している。
退屈を紛らわす為に、取り留めもない会話を続けた。
ずっと、山登りをしている所為で、皆疲れて会話が無くなり。木々の騒めきと足音だけが、山の中に響いていく。
黙々と山を登っていたら、漸く開けた場所に出る事ができた。鳥居と建物から、そこが話に聞いた神社なのだろう。他の皆もそう思ったようで、やっと着いたと言っている。
時間を見ると、丁度お昼の時間になっていた。なので、お昼ご飯を食べてから、見て回る事になった。
早く見に行きたいのと、山登りの疲れから、皆、黙々と、ご飯を食べていた。ご飯を食べ終わり、お茶を飲んで、休憩して、いざ、探検が始まった。
鳥居や社は、建てられてから、時間が経っているようで、塗装が剥げて、端々が傷んでいる。所々、境内の中にも、草が生えている。しかし、萎れているが、青さを残した花が供えられているので、それなりに、人が入ってきているのだろう。
鳥居をくぐって、神社の中に入った。
「ねえ、アレ何だろう?」
麻子ちゃんの向いている方に、視線を向けた。視線の先には、そこだけ、木々によって緑に覆われている場所があった。皆でそこに向かう。
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