第13話 期間限定かもしれない新しい家族。
「いい忘れていたが、この辺りはスリが多い気をつけろよ」
「あの、私も言い忘れていたんですけど。お金の使い方わかりません。このお札はいくらの価値があるんですか?」
「これ一枚で一万の価値がある。とにかく買い物をするときに俺を呼んでくれ。その時に教える」
そういい終えると、アルとソニアは顔を見合わせて、ため息をついた。
そして、「ついてきてますね」「ついてきてるな」という。
先ほどアルがドライフルーツをあげた茶色い髪の獣人の女の子が、アルの後をついてきていた。
「お前が餌付けしたんだ。どうにかしろ」
「そ、そうですね」
アルは後ろに隠れてみている女の子に大きな声をかける。
「私の食べ物美味しかったですかぁああ!!」
アルの大きな声に、周囲の人は動きを止めてアルの方を一度見て、すぐさま元通りに歩いていく。
獣人の女の子が頷いているのが見える。
アルは屈んで、手で招いた。女の子は隠れながらもゆっくり歩み寄ってくる。
「君の名前は?私はアル。よろしくね」
「僕はライ」
「ライちゃん、よろしくね」
アルは微笑むと、眉にしわを寄せてライは頷く。
「食べ物美味しかった。ありがとう。じゃぁ」
そういい終えるとライは去っていこうとする。
「ちょっと待って、ライさん!」
咄嗟に呼び止めてしまう。すいません、ソニアさん。この子を放っておけない。
「お母さんとお父さんは?」
「いない」
そう短く言うと、ライは歩いて行ってしまう。アルは咄嗟にその腕をつかんだ。
「なに?」
アルにはどうしようもなくて、ちらちらソニアの方を見る。
ソニアは吐息をつくと、「うちに来るか?ずっとはおいてやれないかもしれないが」
ライは目を見開いて動きを止めると俯く。そして、大きくうなずく。
アルはライの手を握る。
「ありがとう、ソニアさん。そしてすいません」
「ただ俺が決めたことだ」
「お腹減りました。料理の研究をしたいんで、皆でお店のご飯食べませんか?」
スラムの街の道からは香辛料の匂いやらなにやら色んな匂いがしている。アルはお店の味がどんなものなのかずっと気になっていた。
「そうだな」
「行こうライちゃん」
そういうとライは不機嫌な顔になっていった。
「僕は男だ」
「え?」
アルは止まった。
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