第7話 苦手なものは苦手

そうどうしてアルはソニアの仲間のレニンが苦手なのか、朝ごはんの後片付けをしながら考えてみる。

勝手にレニンが背後から触れてきたのは嫌だったのは明白だ。だがそれだけじゃない。最初レニンさんはアルのことを「こいつ」と呼んでいた。

それなのに急に可愛い子ちゃんとちゃん付けだ。その変わり身が怖いような気がするし、なんだかアル自身が軽んじられているようで、嫌だ。

殴るけられるとか陰口とかとは違って、また違う嫌な初めてのことだ。そこまでアルは考えていて、我に返る。

「殴るけるって、私」

アルは眩暈を感じて、その場に座り込んだ。持っていた木のお皿が地面におちていく。

「アル、大丈夫か!」

ソルが駆け寄ってくる。

「だ、大丈夫」

アルは手を伸ばしてそのふさふさのソルの白い毛並みをなでる。暖かなその感触に、これは夢じゃないんだと、アルは泣きそうになる。そのままソルの小柄な体を抱き寄せて、抱きしめる。

自分にできるだけのことをやるだけだと、アルは決意する。

レア君やクレアちゃんや皆幸せになってほしい。

やはり人肌の暖かさは落ち着く。アルは深いため息をつく。見るとソルのふさふさの白い尾は揺れている。

その時戸を叩く音にアルは「はい!」と声を上げる。近所の人かな?と思いつつ、一応立てかけてあった仮面を顔に装着して玄関に向かう。

玄関の暖簾?を上げると、そこには真顔のヴェイスが立っていた。

正直硬直するほどアルは驚く。

「こ、こんにちは」とアルはひきつる顔で必死に笑顔を浮かべた。

「余計な真似をしないでもらおうか?」

ヴェイスはアルのつけていた仮面をつかんで、地面に投げ捨てた。

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