第4章
「人の店の前でかってに寝てんじゃないよ!」
俺はなかなか強烈な平手打ちをくらい目を覚ました。
痛みで飛び起きると目の前には爺さんがいた。
歳はだいたい70前後といったところか。どうやら俺はこの人に叩き起こされたらしい。
「すみません。寝る場所もなくてつい、、、」
「あ?お前そんなきれいな格好で浮浪人なのか?」
「いやぁ実は記憶失っちゃて、、、」
どうせ未来から来たなんて言っても聞き入ってもらえないだろうからこういうことにしておく。
「それは気の毒じゃなぁ。しかしそこで寝られるとこっちも商売にならんのよ」
「・・・」
返す言葉がない。俺は数秒黙り込んでからこう切り出した。
「あの、ここで働かせてください!」
某温泉映画でも使われたセリフを使ってみた。おれは更に続ける。
「店番でも雑用でも何でもします!だから住む場所と食事を分けてください!」
そして深々と頭を下げた。
「残念じゃがうちは無理じゃ。一人食っていくのがやっとでな。でも兄ちゃんに合いそうな仕事なら紹介してやるぞ。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
「そんじゃついてこい。」
言われるままに俺は爺さんについていった。十分くらい歩いたところに周りより少し大きめな建物が見えてきた。
「ここじゃよ。」
門前に置かれた看板には悲田院と書かれている。敷地内からは子どもたちのはしゃぎ声が聞こえてくる。おそらく児童養護施設的な所であろう。
爺さんと中へ入っていくと数人の幼児と女性が見えた。
「千代さん、働けそうな小僧を見つけてきたぞ」
「あら八兵衛さん、その話本当ですか?」
女性がはつらつとした声で爺さんに言葉を返す。俺より年上だろうが20代ぐらいのお姉さんって感じだ。てか爺さん八兵衛っていうのか。
「前から働き手が足りないって言ってただろう。若くて体力もありそうじゃろ。」
俺は爺さんに続いて自己紹介をする。
「直江俊平と言います。よかったらここで働かせてください。」
このセリフは本日2回目だ。流石に頼む。雇ってくれ。
沈黙の時間が流れる。千代さんは俺をまじまじと見てくる。
気まずい。またダメなのか?
覚悟を決めたその時、彼女はおもむろに口を開いた。
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