第一話 準備
転生して一年が経った。
見えていなかった目も見えるようになり、歩けるようにもなった。
話す事も出来るようになったけど、いきなりペラペラ喋ると驚くだろうから、単語をいくつか喋っている。
パパと呼んだ時に、父親は涙目になりながら嬉しそうにしていた。
歩けるようになったので容姿を確認する為に鏡の前まで歩いて確認した。
私の、いや僕の容姿は栗毛で、ぱっちりした瞳も茶色をしており、中々可愛い。
これならアイドルになってもおかしくない。
アイドルになる近道を考えてみた。
やはり幼い頃から芸能界に入っているのは、大きなアドバンテージになると思う。
後は、ダンスや歌唱力を鍛えないと。
音楽に携わるのだからピアノを習うのもいいかも。
ふふっ、やる事は多いけど、ワクワクする。
僕は必ずアイドルになってファンを幸せにする!!
二歳になり、本格的に行動を開始する事にした。
父親である晴文は、フィットネスジムを経営しているみたい。
中々繁盛しているようで、まだ若そうに見えるのに都内に一戸建ての家を建てているのだから、僕の家庭が裕福な家庭なのは間違いないだろう。
経済的に習い事を複数する事は可能みたいなのでおいおいダンスや、歌、ピアノを習おうと思う。
それよりもまずするべきは芸能界に入る事。
その為にも我が家の実権を握っている母親梨沙子に芸能界に関心を持ってもらわなければならない。
僕は、母がテレビを見る度に、「ぼくもてれびにでたい!!」と主張し続けた。
そのおかげで母が僕を子役事務所のオーディションに応募してくれた。
まずは書類選考を通過し、それから事務所にてオーディションを行うらしい。
母は書類選考で必要な写真を入念に選び芸能事務所へと送った。
書類を送って二週間後に書類選考通過の手紙が届いた。
父と母は喜び、もちろん僕も喜んだ。
後はオーディションで合格すれば子役として芸能界に一歩足を踏み入れる事ができるのだ。
よし、頑張るぞ。
オーディション当日、母はよそ行きの服を着て、僕もいつもと違ってかなりおめかしした。
事務所を訪れ、オーディションが始まる。
母を見るとかなり緊張している様子。
その姿を見て僕の緊張はなくなった。
名前と年齢を聞かれたので笑顔を作り、大きな声で答える。
「しらきのあ、にさいです!!」
その後、殆どの質問は母に向けられていたけど、一つだけ僕にも質問が向けられた。
「ノア君はどうして子役になりたいのかな?」
その質問がくる事は予想していたので笑顔で答える。
「てれびのひとたちがきらきらしていたから。ぼくもきらきらしたい!!」
幼児が言うような台詞を考えたのだけれど、審査員の表情からして好感触を得たみたい。
三十分程のオーディションが終わると、オーディションに同席していた事務所の社長さんが気に入ってくれたようで、その場で合格となった。
母は、審査をしていたチーフマネージャーさんから事務所に入る際の書類の説明を受けて、そこに判子を押した。
これで僕は子役専門の芸能事務所ミラーシェに所属できる事になった。
その晩、父と母が合格を祝ってくれた。
父と母も喜んでくれているようで安心した。
これでアイドルへの足掛かりは出来た。
芸能事務所ミラーシェに所属してから僕の生活はがらりと変わった。
まず、事務所で行われている演技やダンス歌のレッスンをする事になった。
歌やダンスはいずれ習おうと思っていたので嬉しい。
レッスンは一日事に変わり、二時間程かけて行われる。
後はテレビや雑誌のオーディションを受けまくる毎日。
雑誌のモデルやコマーシャルにはちょくちょく採用された。
ドラマや映画のオーディションは中々厳しく落とされてばかりだったけど、ある映画のオーディションに合格する。
題名は『例え偽物でも』。
映画の内容は、友人夫婦が亡くなり、残された三歳の子供を主人公の女性が悪戦苦闘しながらも育てていくお話。
この三歳の子供役に僕が選ばれた。
監督はいくつもの賞を取っている有名な監督、
主演の女優さんは、テレビでもよく見かける若手実力派の女優、
原作は芥川賞受賞作家あさぎりま。
かなり大きな映画の準主役に選ばれた。
これは目立つチャンス。
これで高評価を得られれば、僕の顔は多くの人に知れ渡る。
皆を幸せにするアイドルに近付ける。
頑張らなければ!!
結果から言うと、『例え偽物でも』は日本アカデミー最優秀作品賞を取り、女優の美古島麗は日本アカデミー主演女優賞を取った。
僕は何の賞も貰えなかったけど、映画での演技が評価されて、人気子役の仲間入りを果たした。
『例え偽物でも』に出演した後、沢山の仕事が舞い込み、ドラマや映画、雑誌のモデルと引っ張りだこで、気付けば五歳になっていた。
仕事が沢山あるのは嬉しいけど、ダンスや歌のレッスンが中々受けれていない。
ピアノも習いたいので、仕事をセーブしたいと母に頼んだ。
母は少し残念そうにしていたけど、僕がアイドルになりたいから歌やダンスに力を入れたいと言うと応援すると言ってくれた。
事務所の社長にも仕事をセーブする理由を聴かれたので、母に言った事と同じ事を言った。
散々渋られたけど、母や父が僕の考えを尊重してくれたので、最終的には仕事をセーブする事が出来た。
時間ができたので、歌やダンスのレッスンに、ピアノを習い、更には空いた時間に父のフィットネスジムのプールで体力作りも行った。
そんな生活を繰り返す事五年。
十歳になった僕は、子役として以前程の人気はなくなっていた。
だけどいい。
僕はアイドルを目標してきたんだから。
所属している芸能事務所ミラーシェの社長にお願いして、大手アイドル事務所ジャットに移籍する事が決まった。
準備は整った。
ここから僕のアイドル道が始まる!!
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