第13話 誰にも、誰よりも
あかねが後藤と放課後や週末にデートしている時、私は決まってあかねに連絡する。
急にお腹が痛くなっちゃって動けない、とか、お財布落としちゃった、とか、痴漢に遭った、とか。
すると必ずあかねは私の元に駆けつけてくれる。
そしてそのたび私はあかねへの愛しさで胸がいっぱいになる。
小学校で出会ってからずっと、私はあかねの親友として毎日一緒に過ごしてきた。気が合って、話が尽きなくて、家族よりわかり合えて、――そんなあかねに恋してきた。
誰より大切な存在を、今年同じクラスになったばかりの後藤に奪われた。
あかねもあかねだ。
「入学した時からずっと好きだったって真っ赤になって言われて、感動しちゃった」
3週間前、頬を染めてそう言ったあかね。
それぐらいで男と付き合っちゃうんだ。
初めてかも知れなかった、あかねにがっかりしたのは。
それなら私が好きって言っていたら?
あかねは私を好きになってくれていたの?
ずっと伝えたくて、でも私たちの仲が壊れるかもと思って言えなかったのに。
当然のことのように好きだとあかねに言える後藤が憎かった。
だから私はあかねを取り戻すと決めた。
だって私が一番あかねのことをわかっていて、あかねのことを好きだから。
あかねは私といるのが幸せなんだから。
そして私は今日もデート中のあかねにメッセージを送った。
〈おばあちゃんが転んで怪我したから親が突然泊まりがけで出かけちゃって、一人でいるのが怖いの。うちに泊まりに来てくれる?〉
今までいろんな嘘を考えてきたけれど、これは本当のことだった。
申し訳ないけれど、祖母にも、翌日の学校のために私を置いて行った父母にも感謝した。
〈わかった。行くから待ってて〉
あかねはそのメッセージから一時間後に私の家へ来てくれた。
薄くメイクしてお気に入りのワンピースを着たあかねは、いつもに増して可愛かった。
「後藤、またかって怒ってたよ。でも仕方ないよね、万里香だってわざとじゃないんだから」
苦笑してあかねはそう言った。
「……あかねはいつも後藤より私を優先させてくれるよね」
一瞬きょとんとしたあかねは、笑顔で頷いた。
「そりゃあ、万里香は一番の親友だもん」
私はあかねの小さな両手を握った。
「そうだよね。私は後藤より誰よりあかねのことをわかっているし、――あかねのことを好きだよ。あかねだって私を好きだから私のところに来てくれるんでしょう?」
私の手は震えていた。
はっとして見開かれたあかねの目が次第に潤んでいく。
「大好きだよ。もう、誰にも渡さないから」
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