第8話 いつまでもきみは
講義室の前で私を見た
その様子を見て私は満足した。
週末のうちに、胸の下まであった長い髪を顎まで切って、ふんわりとしたパーマをかけ、カラーも落ち着いたブラウンにした。服装も甘めのワンピースばっかりだったのに、襟ぐりが開いた大人っぽいふんわりした黄色いニットに茶色のロングスカート、革のショートブーツ。ファッション雑誌の1ヶ月コーデのひとつをそのまんま真似したもの。唇も水彩絵の具のような赤いティントリップを塗ってきた。
「……
「うん。どうかな」
碧は笑顔になって言った。
「
──だって、髪型も服装もメイクも、碧の憧れのモデル「仁奈」の真似だもの。
私がどんなに碧のそばにいても、優しくしても、碧にとっては私はいつまでも友達枠。
いつも碧は、仁奈のインスタや載ってる雑誌をチェックして、この髪型かわいいとかこのコーデ超似合うよね、とか嬉しそうに私に言うのだ。
そして私は碧が仁奈を絶賛するたび、胸がかきむしられる気持ちだった。
──だって私は、高校で出会った頃から碧が好きなんだもの。
碧は、仁奈がドラマに出たとき、こんなかわいい人が同世代にいるのかとびっくりしたらしい。インスタで飾らずにすっぴん見せたり(盛ってると思うけど)、ジムに行って努力しているところがいいのだそうだ。
でも、自分には仁奈スタイルは似合わないからといって、ショートヘア、シャツにデニムばっかりなんだけれど。
私はそんな碧がずっと好き。有言実行で嘘をつかないところや、ちゃんと講義に出て真面目にノートとったりしているところが好き。バイトでも誰も見ていなくても仕事に手を抜かないところも好き。
でもただひとつ、私の気持ちには鈍感で気づいてくれないところは嫌い。
だから。
「碧に、仁奈より私を好きになってもらいたくて」
こうでも言わないと、いつまでもきみは私を友達のままにするだろうからね。
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