第12話 ステータス画面の開き方
「さっき獣王拳覚えたって言いましたよね?」
「あぁ、そうだけど?」
「スキルレベル3で、新しく習得する技ですね。」
「それってどうやって確認したんですか?」
「は?どういうこと?」
「いや、実はですね…」
木暮は今自分達が抱えている悩みを打ち明けた。
徳永と宍戸もその言葉で思い出した。
キャラクターのステータスやプレイ時間、所持品などが確認できるメニュー画面が開けずに困っていた。
しかし松下の「獣王拳を覚えた」という言葉から、松下は恐らく何らかの方法でメニュー画面を開く方法を知ったのだと、木暮は察した。
「ははーん。あんたら、メニュー画面が開けなくて、困っていると?」
「そうなんです。どうやればいいんですか?」
「どうやればいいと思います?」
「え?」
松下は敢えてすぐに答えを言わなかった。
これはじらすパターンだと徳永は思ったが、木暮は早く答えが知りたかった。
「そんな勿体着けないでくださいよ。」
「指2本でタップすればいいんすよ。」
「指2本でタップ?」
松下の言葉に一同戸惑った。
指2本でタップするとはどういうことなのか、何かしらのスイッチがどこかにあるのか。
徳永はいろいろ思案した。
自分も指2本で、体のあちこちを触ってみた。
すると松下は徳永の行動に、思わず反応した。
「お!徳永さん、惜しい!そうっす、体のどこかっすよ!」
「え?そうなの?」
「さぁ、どこタップすればいいでしょ?」
松下の言葉に徳永もテンションが高くなった。
こうした問いかけには、自力で答えを見つけてみたい、と徳永には謎の自負があった。
それに続いて木暮と宍戸も、体のあちこちを指2本で触ってみた。
「体のどこかにスイッチがあるということですか?」
「そういうことっす!」
「だ、だからそれがどこなのかって…」
その時だった。
「うわ!?」
突然徳永が叫んだ。
徳永の目の前に、謎の長方形の枠が広がっていた。
見てみると、背景はやや透明じみた灰色で数字がたくさん並んでおり、枠の横側には「クエスト名」や「ステータス」という表記がある。
しかし木暮と宍戸には何も見えなかった。
「おぉ、徳永さんビンゴ!」
「こ、これがステータス画面…」
「は?何も見えないんだけど…」
「もしかしたら、自分のステータスは、自分しか確認できないのかも。」
「そういうことですか。どこタップしたんです?」
「いや、ここを1回タップしたら、出てきたんだけど…」
徳永が指さした体の部位、それは額だった。
木暮と宍戸は信じられないような表情だったが、2人とも同じように額を指2本で押すと、やはり目の前に長方形の枠が広がった。
「うわぁ!本当だ、凄い!」
「なるほど。これは気が付かないわけです。」
「本当凄いっすよねぇ、これ。自分なんか超偶然に発見したんすよ。最初現れた時、超常現象かと思いました。」
松下も感心しながら、自分の額を押した。
「因みに閉じたかったら、もう1回同じところをタップすればいいっす。」
そう言われて、3人とも再度額を指2本で押すと、目の前にあったウィンドウが消えた。
今まで頭の中で「ステータス開け!」と念じていた自分が阿保みたいだと、徳永は痛感した。
あとはその目の前に現れた枠を、ちょうどスマホの画面と同じように指でなぞってタップすれば、各項目の画面に遷移できる仕組みになっていた。
さらに右側頭部を指2本でタップすると、バトル中限定で自分のHPとSPも表示されることも、松下は発見し全員に説明した。
「こういった説明も何もないって、本当に不親切すぎじゃん!」
木暮は不満をもらしたが、それはほかの3人も同じだった。
「せめて召喚直後に、チュートリアル的な説明でもあればよかったのに。」
「簡単なチュートリアルについては、最初の魔法陣のある召喚地点でされるはずですけどね。やはり全員バラバラに召喚されたことで、何か狂ったんでしょう。」
宍戸が理知的な説明をしているが、正直ほかの3人ともよくわからなかった。
(なんとなく言いたいことはわかる気がする。バグってやつなのかな。)
徳永はそう考えたが、兎にも角にもステータスが確認できたことで、一旦変な憶測はわきに置くことにした。
「でも、これでやっとスキルレベルとか確認できますね。僕のステータスは…」
徳永は自分のスキルレベルと特殊技名を見て、固まってしまった。
「私のステータスはっと…、あ!スキレベ2に上がってる、もう少しで3に上がりそう!」
「私はスキレベ3のままですね。」
「俺もスキレベ3。でもさっき狼倒したから、後少しで4になりそうっす。」
全員がスキルレベルの確認と、それまでに習得した特殊技の確認を終えた。
しかしもう一つ大事なステータスの確認もあることを宍戸は告げた。
「あとはキャラクターレベルの確認もしましょう。」
スキルレベルとは特殊技の成長、およびスキルポイントの上限の伸びについて関係する。
スキルレベルが上がると、新たな特殊技を習得し、スキルポイントの上限も伸びて、消費可能なスキルポイントも増える。
スキルレベルも大事な要素だが、もう一つ忘れてはいけないのが、キャラクター毎に設定されている普通の強さの指標だ。
スキルレベルと対照的に“キャラクターレベル”と呼ばれているが、文字通りそのキャラクター自身の総合的な強さの指標を表す。
具体的には、体力の残量であるHP、基礎攻撃力、基礎体力、基礎回避力など様々なパラメータが用意されていて、キャラクターレベルが上昇すればそれらのパラメータも上昇する。
これらのパラメータが上昇すればモンスターとの戦闘が楽になるが、レベルを上げるには、モンスターを倒して経験値を得なければいけない。
そして一定の経験値が溜まることで、スキルレベルとキャラクターレベルの2つが上がる仕組みになっている。多くのRPGでは当たり前のような仕様になっていることは、4人とも理解していた。
「うお!俺のレベルもう8になってる!」
「え?私まだ5だけど。」
「多分、それもさっきの狼ですね。」
より強力なモンスターを倒せば、それだけ多くの経験値を得られる。
松下がさっき倒した狼は中ボスだ。通常の雑魚モンスターと比べると、約5倍近くの経験値を誇る。
そのため松下のレベルの高さにも頷けるが、木暮はまだ理解しかねていた。
「あれ?私達に経験値いかないの?」
「このゲームの経験値配分の計算からすると、当然松下さんが一番多くなりますね。」
「経験値の計算、なんかこのゲーム難しくって…」
「俺もぶっちゃけわかんない…」
このゲームは倒したモンスターから得られる経験値は、戦闘後各キャラクターへ配分されることになる。
しかしそのモンスターの撃破についての“貢献度”という指標が内部的に設定されているようで、それが木暮と松下を悩ませたりもした。
「まぁ、簡単に言いますと、そのモンスターに一番ダメージを多く与えた人が、一番多く経験値をもらえるということです。」
「それは、まぁなんとなくわかっていたけど…」
「そんな複雑な計算にしなくってもいいのに。」
「理由は簡単ですよ。」
宍戸はこの仕様について、自分の見解を丁寧に説明した。
「このゲームはキャラクターが最大7人いますから、7人でオンラインプレイすることもできます。だけどその場合、誰かが棒立ちして戦闘中何もしないっていう事態も起きかねません。それを防ぐ目的で、この貢献度システムがあるんだと思います。」
2人ともこの説明を聞いて、ある程度納得がいったようだった。
オンラインプレイ機能は開発会社の説明するには、まだ実装中とのことだったが、その弊害である貢献度システムはソロプレイでも実装されていたのだ。
中ボスを単騎で倒したとなったら、松下のレベルは一気に跳ね上がることになるのは当然だ。
「あとは、所持金も気になりますが…って、なんだこれ!?」
宍戸が確認した所持金は、予想外の桁数になっていた。
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