リコーダーは難しい。そして、間接キスだ。

第3話

「さて、ご飯も食べたことだし、午後からはリコーダー、吹こうか」

「そうしよう! これが楽器か~!! 有理紗、吹いてみて」

ドレミ~ド~ミドミ~レ~ミファファミレファ~……

「これはドレミの歌だよ。歌にもなっているけど、リコーダーで吹くのにもうってつけの童謡なの」

「童謡って?」

「童謡は、子供向けの曲ってことかな。リコーダーはね、穴を塞ぎながら息を吹き、音を出すの。やってみて」

「持ち方から難しいな。ドはどうやって出すの?」

「全部の穴塞いで」

「ピョロ~、あれ、何か気の抜けた音が出た」

「指がちゃんと穴を塞げてないな。もう少し、力込めて」

「ドー!!」

「ドの音出たけど、力み過ぎ!!」

「リコーダーって難しいわね……」

「ドは特に出すのが難しいかもね……あたしもドの音出すのは最初苦労していたなぁ……」

そういえば、リコーダー貸すってことは間接キス……ってことじゃない!?

あたし、初キス、テトラとってことになるの!?

それとも、間接キスならカウントしない!?

あわわわわわわわっ!!!!!

「……どうしたの? 有理紗? 顔赤いよ?」

「テテテテテテテトラって、キキキキキキキキキキスしたことある!?」

ド直球に聞いちゃった~!!!!!

「昔、したことあるな」

「ええええええええええええええ~!!!!! だだだだだ誰と!?」

テトラ大人~!! 14年間生きてきてその間にキスの経験があるだなんて……!!

「やだな、有理紗。あなたとよ。昔、あなたが溺れていた所を私が人工呼吸して助けてその時、キスしたじゃない……あ、そういうのはカウントされないのかな?」

………………そうか、あたし、昔、テトラとキスしたことあったんだ……。

「とにかく、その時が、私と有理紗が出会った時じゃない。目の前に溺れている女の子がいる!! でも、人間、関わりたくない……でも、助けなきゃ!!ってすごい葛藤したなぁ……」

「そうだったんだ。あたし、テトラとの出会い忘れていたよ」

「あーひどい。それから、毎日会うようになって歌を歌うようになったんだよ。それから、有理紗が小学4年生くらいになったくらいから来てくれなくなって……私、待っていたのに」

「ごめん。その時から学校で嫌なことがあって、学校終わってから塞ぎ込むように家で大人しくしてたからさ。段々、不登校にもなっていたし」

「そうだったんだ。でも昨日も待っていたからすぐ現れたでしょ。私」

「そういえば、そうだね。普通なら愛想つかしていなくなっちゃうよ」

「私には、有理紗が大事な友人だもの。だからまた会いたいって思ってた」

「テトラ……」

「こんな私でも最初は人間と関わりたくないって面倒だと思ってたんだよ。でも、有理紗を助けてから、歌を教えてもらって、一緒に過ごす内に人間って悪い人ばかりじゃないんだって思えたんだから」

 結局、間接キスどころか、ファーストキスをテトラに捧げていてのかー。今日は、テトラのことでドキドキすること多いなぁ。胸元は長い髪で隠しているだけだわ、リコーダーで間接キスかと思いきや、出会い頭に助ける為とはいえ唇を奪われていたのだから……

「有理紗、話、聞いてる? 顔赤いよ? 熱でもあるの?」

「いやいや、大丈夫、大丈夫!! ちょっと考え事してただけ。あたしもテトラは大事な友人だよ。不登校になってからもすぐに会いにいけばよかった」

「そうだよ、そんな時こそ話聞いたのに……」

「あ、でもね、いじめられた原因、テトラのことなんだ……」

「私のこと?」

「放課後何しているの?って聞かれたから、人魚と遊んでるって答えたら、誰も信じてくれなくて……」

「私のこと話してくれたんだ……」

「うん、皆にもテトラのこと、人魚のこと知ってもらいたくて仲良くなれたら良いなぁと思って話してみたの。そうしたら、誰も物語上の空想上のものだよって……」

「皆、海に来れば良いのに。そうすれば、私はここにいるんだから」

「そうだよ。言ったよ。今度の休みに海に行こうって。でも結局、来てくれる人は誰もいなくて、そこから嘘つき呼ばわりされるようになって……」

「で、今も、私が原因で友達が出来ないんだ?」

「うん、もはや勝手な噂を広められて嘘つきにされちゃっているんだけどね……」

「それは、酷い……やっぱり人間って信じるの怖いわね」

「でも、良かったかも。テトラ取られなくて済んだかも。こうして2人で過ごしているのが心地良い」

「それもそうかもね。でも、いつか、有理紗と人間のお友達、仲直りできると良いわね。だって、有理紗はこれからも人間世界で生きていくのだから。私も常に横に居てあげたいけど、足がないから歩くことができないし……」

「テトラ……。ありがとう。おっと、もうこんな時間だね。また、明日も歌ったりリコーダー吹いたりしようね。またね!!」

「またね。明日も色々教えてよね」

 今日はテトラのこと凄い意識しちゃった。明日聞いてみよう。テトラはあたしとキスした時どういう気持ちだったのかって。

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