ウザい A

エリー.ファー

ウザい A

 ホールトマト缶を投げた。

 それが老婆に当たった。

 あの時、飛び散ったのが血だったのか、それともトマトだったのか、もう私には分からない。

 次の日、老婆が泣きながら電話をかけてくる夢を見た。

 自首した。

 私も何故か泣いていた。


 グミを大量に買ってきて、無理やり娘に食べさせた。時間を決めて、それよりも食べ終わるのが遅かったら顔を叩くと躾けた。

 娘は小さな手にいっぱいグミを乗せて、それを喉の奥へと押し込んだ。泣いていた。

 娘が死んだ。

 軟弱すぎて、吐き気がした。


 ノートパソコンの調子が悪く苛々したので、猫を蹴っていた。

 弱っている猫なので、逃げることもできないし、反撃もしてこないのでとても楽しかった。

 公園の砂場の近くに、猫の死体ができあがった。

 僕のせいだけれど、僕のせいではないと思う。

 ノートパソコンの調子が悪くなかったら、そんなことはしなかったし。

 というか。

 猫を蹴って、猫が可哀そうで、だから、それが何なの。


 ポスターに落書きをした。

 何人かの大人に怒られたので、その大人の顔に向かってスプレーをかけた。

 四人失明した。

 マジで気分がよかった。何か怒られる理由を作ってまたやりたい。


 エスディージーズとかいうわけの分からない言葉を発しているバカがいたので。

 車で轢き殺した。

 謝ってきたが、何度も往復すると静かになった。

 そういうわけのわからない言葉を口にしてはいけないと思う。

 みんなに伝わるようにするのが、その言葉を発する側の責任であって、こちらは聞く側なのだ。

 例えば、レストランに食べに行って料理を出された時に、その料理の内容を説明するのは客ではない。料理人である。

 責任をとることのできない人間の口から出るものは言葉ではなく、迷惑である。

 死んでよかった。


 女の子がいた。

 誘拐して、切り取って食べた。

 美味しかった。


 幸せな家族の写真ばかり撮っていた。

 どれも同じような表情でつまらなかった。


 爆弾を仕掛けた。

 幼稚園だった。

 もしも、爆発させたら卑劣な犯罪であると言われるかもしれない。

 しかし、そもそも何かを狙うとしたら自分よりも弱い者というのは当然であるし、強い者がそのように振舞うのはよくあることである。

 勘違いをしてはいけない。

 これは常識の中の物語である。


 だまし取ったお金を貯金した。

 大切なものであるし、老後のためである。

 元々は、どこかにいる誰かの老後の資金だったわけだが、今回はしょうがない。

 僕がお金を欲しいと思ったのだ。

 それならば、しょうがない。


 言い訳を探した。

 よくあることである。

 言い訳を見つけられなかった。

 しかし。

 人生に納得した。

 これもよくあることである。

 潔く生きていこうと思っていたのに、何度も歩みを止めるように命令される。

 本当はどこにでも行けるのに、何故、このように邪魔をするのか。

 私は、僕は、あたしは。

 あなたさえいなければどこにでも行けたのに。

 なんで、こんなことをするのか。

 ここから解放されたい。

 ならばどうするか。

 殺すしかないのか。


「多くの人が犠牲になったようです」

「そうですか」

「容疑者に反省の色はないそうです」

「残念なことです」

「身勝手な犯行です」

「犯行とは身勝手なものです」

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