第2話

森の中をしばらく歩いていると、水色のぷにぷにした物体(多分スライム)が道のど真ん中にたたずんでいた。あからさまにバトルが開始されるであろう展開だと感じていた次の瞬間、いきなりそのスライムが攻撃を仕掛けてきた。

「うわぁぁぁ、、、」

俺はなす術もなくスライムの攻撃を喰らってしまった。

「ぷにょん。」

「え?」

柔らかい弾力が伝わってきただけで痛くも痒くもない。スライムはどんなゲームでも最弱キャラとして描かれてきたがこの程度なのだろうか?そんな疑問が出てきたのも束の間、龍がスライムに突進した。

「にゅるるるる。」

変な効果音とともにスライムは消滅していった。スライムがいた場所には青く輝く宝石のようなものが落ちていた。

「ドロップアイテム的なものなのか?」

俺が龍にそう質問を投げかけると龍が応えた。

「まあそんなところじゃないか?このドロップアイテムを換金したり装備の素材として使ったりするんじゃないか?まあ所詮スライム。そんな金にもならんだろう」

さすがゲーマー。そこまで頭が回ってるとは思わなかった。

「とりあえずこのまま森を進んで街らしきところに出てみるか。」

道中いろいろなモンスターに出くわしたもののそいつらの攻撃は俺たちには効かず龍の突進で全て終わったので俺は自分の実力を知ることができなかった。

「確か神様がなんか言ってた気がするんだよな、、、能力はあっちに着いてから自分で決めてもらうだったか。なあ龍、能力って何だと思う?」

「まあ基本的にはステータスにプラスで描かれる個人個人に特有のもの的なやつじゃねーの?知らんけど。」

そんな話をしていると森を抜け村が見えてきた。パリの街並みに似ていたその村はアラントという名前だった。レーバテインに来て初めて会う人たちは皆人間と同じような見た目をしている。かという俺も自分の姿を見たことがなかった。街の人たちは俺ら二人(今は一人と一匹というべきか)をジロジロと見ている。一体なんだったのだろう?と思っていたら一人の男が俺たちに話しかけてきた。

「あなた様は、かの有名な勇者様ではありませんか!」

いきなり話しかけられて驚いたが日本語と同じような喋り方をしている。自動翻訳機能的なものがあるのかな。そんなことを考えていたがちょっと待てよ?今なんて言った?

「はい?」

「魔王を討ち滅ぼしこの世界を平和に導いた勇者様が帰って来たぞ!」

ちょっと意味がわかんないんだけど、、、整理すると俺はこの世界の英雄的な存在だった人に似ているってことか。でも俺は転生したばっかだしこっちの世界の事情とか全く知らないんだけど、、、

「他人の空にだと思いますよ。」

俺がそういうと男は俺の腰に常備されていた武器を指さしてこういった。

「その剣は勇者様のみに与えられる神聖なものなのです。そんなものを持っている方が勇者様でないわけがありません!」

男はそういうと俺と龍を連れて村長の家に向かった。

「村長!伝説の勇者様がこの街に来られました!」

「何じゃそのように声を荒げて。勇者様はとっくの昔にこの世を去ったではないか。忘れたのではなかろう?」

「でもこのお方を見てください!伝説の剣に伝説の装備を身に纏っております!」

男がそういうと村長はまじまじと俺の事を見てきた。すると次の瞬間、

「おぉ。勇者様のご帰還じゃあ!あぁ、、、また勇者様に会うことができるとは。今日は宴会じゃ!勇者様の歓迎会を行うとしよう。」

なんかそっちで勝手に盛り上がってるけど宴会ってことは飲んだり食ったりできるのか。それはいいな。せっかくのご好意だしありがたく頂戴するか。

 その夜、宴会が壮大に執り行われた。俺たちはこっちの世界に来て初めて口にする食べ物に言葉を失った。うまい、、、こんな食い物食べたことない。肉も魚も野菜だってほとんど俺がいた世界と同じに見えるが味は百倍うまい。どうしてこんなにうまいのだろう。いつまででも食ってられる。そんな事を思いながら爆食いしているとまたさっきの男が話しかけてきた。

「勇者様はこれまでどこにおられたのですか?死去されたという噂が絶えず流れておりましたしそのお姿を見たものもおりませんでしたからほとんどの人々が勇者様が死去されたことを信じていますよ。」

俺はこの質問にどう応えていいのかわからなかった。こんな素晴らしい宴会を開いてもらっているしここまできて俺は勇者ではないと言ったら何をされるかわからない。俺は咄嗟に嘘を考え、

「山の中に閉じこもって修行をしていました。」

と応えた。

「そうでしたか。長い時間お疲れ様でした。これからどこかに向かわれるのでしょうか?」

「特にはないです。」

そう答えると男はにっこりと笑顔を見せて、

「そしたらこの村に住んではどうでしょうか?」

と誘ってくれた。ラッキーな提案だ。俺は家無しどころかこの世界のことを全く知らない。この村はそこそこな大きさだし図書館みたいなところもあるに違いない。そう考えた俺は首を縦に振った。村人たちは大喜びでさらに宴会が盛り上がった。俺も何だかそのことがうれしくていい気分になった。宴会は一日中続き翌日の昼ごろ俺はマイホームを手に入れた。高校生にして持ち家とは大した出世である。そんなことを考えながら俺は夢見心地にベットに寝転んだ。

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