第3話 農村での一日 ー02ー

 森の中は村の暖かな雰囲気とちがいどんよりとしていた。

まるで森事態が一つの大きな生き物で、その生き物の胃袋に自分が入り込んだような気がするほどだ。

しばらく歩いていると茂みをかき分けてこちらに向かってくる音が聞こえる。

音のする方向に振り返り、腰に下げているこん棒を構える。

そうして構えた瞬間、音の正体が飛び出してくる。


 大きさは小型犬や成猫ほどの大きさである。

四つ足で短い脚のせいか腹の伸びた毛が地面に擦れそうになっている。


 モンスター『大ネズミ』が現れた。


 動きはすばしっこいが捕らえられないほどではない。

小さいネズミと比べて可愛らしさとは程遠い見た目をしているソレは地面を這いながらこちらに向かってくるが……


ーーーードカッーー


 タイミングよくこん棒を振り下ろし、大ネズミを昏倒させる。

こん棒をぶつけた大ネズミは全身の力が抜けきったかのようにダラリとその場に倒れこむ。

起き上がらないうちに、すかさずナイフで手際よく首を落とす。

切り落とした首からは血が勢いよく出てきて慌ててしっぽを握り持ち上げた。

そのまま腹を開き内臓を取り出す。

後は川で肉を冷やせば処理は完了だ。

ネズミの頭は袋に放り込み討伐した証として持ち帰る。

これが自警団の主な仕事であった。


 この森ではモンスターは大ネズミのみでモンスターとしての強さは下から数えたほうが早いという弱さだった。

だからと言って放っておくことはできない。

大ネズミの恐ろしさは繁殖力であり、いくら倒してもキリがないほかにその好戦性と雑食なのが問題で、頭が悪いのか格上のモンスターに対しても襲い掛かるほか、雑食性で作物を荒らす害獣としても知られていた。

大人であれば苦労せず、討伐することができるが子供や牛にはひとたまりもないだろう。

それ故に自警団はある程度の数は下回らないように気を付け、ネズミを間引いてもらい、異常が起きれば自らの死によって村に危機を知らせる。


 今日はその後にも二匹ほど大ネズミを仕留めた後、死体の処理をして村へと戻る。

今日も森に異変はないことに胸をなでおろしながら帰るのであった。

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