「センパイ、まだ一緒にいたいです」


「ご馳走様でした」


パチン、と自分の掌を合わせてセンパイにお礼を言う。


「センパイ、ありがとうございました。とっても美味しかったです!」


「気に入ってくれたのなら良かったです。今晩はもっときちんとしたものを作りますからね」


おぉっと。センパイは料理もできるようだ。大変ハイスペックである。でもそうなったのなら私もセンパイの料理のお手伝いをしたいというものだ。なんたって彼女なのだから! 彼女! なのだから!!


「私も手伝いますね!」


「おや。優良さんが料理できるとは思いませんでした」


「どーせ不味いって」


「長瀬クン黙って!! 私だって作ろうと思えば作れますから!」


と私が言うとセンパイは楽しそうに笑って「楽しみにします」と言ってくれた。そんな事を言ってくれたのなら頑張らない訳にはいかないだろう。


あー…、課金するから今すぐ料理上手のスキルが欲しい…。


「それでは優良さん、荷物を部屋に持っていきましょうか」


「そうですね!」


紅茶を飲み干し、お皿とマグカップをキッチンに下げて洗った後私とセンパイは2階へと向かった。


上がってすぐ左側の部屋。部屋にお邪魔すると前来た時と変わらない雰囲気が私を出迎えてくれた。


白を基調とした部屋に清潔感のあるベッド。最低限のものしか置いていない勉強机に参考書やら難しい本が並んでいる本棚。この前来た時と何ら変わっていない。


まぁこの短期間で変わっていたらそれはそれでどんな心変わりをしたのだろう? と疑問に思うが。


「荷物は一先ずベッドの横にでも置いておいてください。今机出しますね」


「分かりました!」


トスッ、とベッドの横に荷物を置く。それからセンパイが出してくれた机の傍に腰を下ろす。センパイも机を挟んで向こう側に腰を下ろして宿題を広げた。


「優良さんは何を持ってきたんですか?」


「数学と化学です!」


「どちらも理数系ですね」


「せっかくならセンパイに教えてもらいながら…って思いまして。ダメでしたか?」


私が控えめにそう聞くとセンパイは小さく首を振った。


「まさか。嬉しいですよ。優良さんに頼られるなんて」


「よかった…。ありがとうございます!」


「それでは始めましょうか」


「了解です!」


センパイと勉強するのなんて贅沢すぎて私には勿体ないくらいである。しかしお泊まりして勉強なんて普段はないのだからしっかりとやらないと。ここぞとばかりにセンパイに急接近してやる…!


それに…。


私は数学のページを開いて計算をし始める。計算式を書こうとシャーペンに力を入れるといとも簡単に芯が折れてしまった。


パキッ。


それに。


──センパイはそろそろ受験勉強をしなければならないし




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る