「センパイ、手作りですね!」


「優良さん、朝ご飯は食べましたか?」


「いえ。実は寝るのが遅くて…」


センパイの家にお泊まりするのが楽しみすぎて結局1時頃まで寝られなかったなんて言えない…!


「そうでしたか。軽食なら用意できますが如何しますか?」


センパイはそう言うと首を小さく傾げた。


セセ、セ! センパイの手作りのご飯が食べられるなんてそれはもうレア度URですけど?! えっ? そんなのお腹いっぱいでも食べますが??


私は息が荒くなるのを抑えつつゆっくりと首を縦に降った。するとセンパイはニコッ、と笑って「少し待っていてください」と言い残すとソファーから立ち上がってキッチンへと向かった。


しかしセンパイの作る軽食に釣られてしまったがセンパイがリビングからいなくなってしまえばいいのにここにいるのは長瀬クンと私だけ。物凄く気まづくなってしまう。いや、しかしむしろ向こうは私がいないように振舞っているのだからここは気まづく思う必要もないだろう。


そうだ、気にしないでおこう。それよりもセンパイの軽食を作る様を見たい…。


そう決めて私はそろそろと長瀬クンの後ろを通過してキッチンへと向かおうとした時だった。


「あのさぁ」


「!」


急に長瀬クンに話しかけられた。最近はセンパイの近況報告メッセージも必要なかったため、直接にしろ間接的にしろ話すのは久々だった。オマケに今日は家にお邪魔するどころかお泊まりをするのだ。


ブラコンである長瀬クンが何も思わないわけないだろう(それにさっき私の変人行動確認済みである)。


「な、何かな…? 長瀬クン…」


「お前マジで泊まるの?」


後ろから見える長瀬クンのゲーム画面にはピコピコと住人の性格を操作している。ただ普通に話すよりもゲームをしながら話される方が顔も見えないしで何だか怖い。


「その、つもりで来たけど…」


もしかして泊まるなっていいたいの?! それは無理だよ! 無理! だって泊まる気でいたから!!


と、口には出せないが思いの丈を長瀬クンに(心の中からだが)伝える。


「別に泊まってもいいんだけどさ」


お、通じたようだ。


「うん」


「兄ちゃんに指ひとつでも触れるなよ」


「それは無理」


おっと。即答してしまった。


「は?」


案の定、不機嫌になってしまった長瀬クンがこちらを振り返る。いや、ゲームの画面可愛いキャラのままだからあまり威圧感がないよ…。


「だって! センパイに触れるなとか! 息するなって言ってるのと同じだからね?!」


「だから息吸うなって言ってんだよ!」


「遠回しに死刑宣告?!」


「死ね!」


「ストレートすぎる!!」



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