「センパイ、それほのぼの系ゲームですよ」



「ただいま戻りました。2人でなにやら話していましたがどうかしましたか?」


トレーを私の目の前にある小さい机の上に起きながらセンパイは私たちの会話について触れる。


「なっ、な、なんでもないです!!!!」


お願いだからセンパイ! 今は何も触れないで! 忘れて!!!


なんて念を込めてセンパイの瞳をじっと見つめるとセンパイは何か察したのか「そうでしたか」と笑った。長瀬クンも長瀬クンでこれ以上話しても面白くないと思ったのかに座り、ゲームに集中し始めた。


よかった。とりあえずゲームに集中してもらえれば何も心配はないだろう。そんな事にホッと一安心しながら私はロングテーブルの上に置いてあるマグカップに手をつけた。


「いただきます」


「はい。どうぞ」


マグカップの中にはホットティーが入っていてゆったりと湯気が動いている。そんな湯気を見つめる私を横目にセンパイは長瀬クンに話しかける。


「優二も何か飲みますか?」


「んー? 俺は大丈夫ー。飲みたかったら自分で淹れるし」


「分かりました」


センパイはそう言うと私の隣に腰掛けた。すると困ったように眉を曲げて話し始める。


「優二がゲームをするといつも素っ気なくなるので残念です」


いや、センパイ。いつも長瀬クンは素っ気ないですよ。てか素っ気ないというか毒々しいですよ。


なんて言ってもセンパイはキョトンとした顔をするのだろう。だって長瀬クンはブラコンだから。


「なんのゲームをしているんですか?」


素っ気なくなるくらいだからFPSとか? 対戦アクションゲームの可能性もある。あとはなんだろうか。とりあえず長瀬クンは口が悪くなるイメージしかない。


「確か…。“いらっしゃい! どうぶつの里”だそうです」


「えっ。ゴリッゴリの育成シュミレーションゲームじゃないですか」


“いらっしゃい! どうぶつの里”。別名“どう里”と呼ばれているそのゲームは主にバトルなどの激しめというより、動物たちを育成していくほのぼのとしたゲームである(かくいう私も持っている)。


世界的にも人気である理由は動物たちの種類の多さ。それに加えて育成、選択肢の幅広さである。好きな動物を選んで一緒に村おこしならぬ里おこしをするのだが、選択肢によって動物たちの性格や容姿が分かる。


十人十色の村の形態があるため、ほかの里に行ってもよし、もっと自分の里を発展させてもよしのなんでもできるゲームなのだ。


「長瀬クン…ほのぼのゲームやるんですね…」


「えぇ。かれこれずっとやっているんですよ」


「そうなんですね…」


あとで見せてもらおう。



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