「センパイ、早いですね!」


「美味しい…」


ズルズルと音を立てるのは美しくないという事をどこかで聞いていたため、れんげに数本を乗せてそのまま口に運ぶ。時々野菜や汁も乗せて一緒に口の中へ。


ラーメンの美味しさに加えて野菜のシャキシャキ感、鼻を通るニンニクのいい匂い。これは食べた後が怖い。


それでも気にしないで食べ続けてしまうくらいここのラーメンは美味しかった。


「美味しいですね」


「はいっ!」


しかし思っていたよりも熱いためフーフーと息をかけて冷ます。本当ならばここが家ならセンパイにフーフーをしてもらいたかったが残念ながら外食のため断念。くっそぅ。


そのまやお互い黙々と食べ続ける。喋りながら食べるもの美味しくて楽しいが、やはりラーメンとなると対面ではないし話して食べる事があまりないだろう。


センパイと話していないからといって気まずい雰囲気になる事もないため黙々と食べ続けられる。美味しい。


黙々と食べ続けていたおかげか私の食べたラーメンは半分を超えた。そのタイミングでチラリ、とセンパイの方を見てみるともう既に食べ終わりかけていた。


「んっ! センパイ、早いですね」


「お恥ずかしながらあまりの美味しさに黙々と食べてしまって…。ご馳走様でした」


センパイは恥ずかしそうにはにかみながらナプキンで口を拭いた。いや、センパイのはにかみ顔レア過ぎて。


「優良さんは食べきれそうですか?」


「はいっ。すみません、待たせてしまって…」


「いえ、気にしないでください。ゆっくりと食べてくださいね。喉に詰まらせたら大変です」


センパイはそう言うと私のコップに水を汲み、その下にナプキンを敷いてくれた。正にマザー。お母さんである。あれ? いつの間にセンパイ、ジョブチェンしたのだろうか。


「ありがとうございます。なんだかお母さんみたいですね」


「おやおや。そうなりますと優良さんは僕の子供という事ですか?」


「…あっ。何かに目覚めそうです」


「永遠に目覚めないでください」


センパイ。はっきり言い過ぎですし、反応が早いですよ…。


なんて思いながら私は「悲しいです」と泣いたフリをする。しかしセンパイには効いていないようで「ふふ」と笑われてしまった。


それから時折センパイと話しながらラーメンを食べ終わる。実際、食べ切れるとは思っていたがこんなにもスムーズに食べ切れて驚いていた。


「ご馳走様でした!」


「ご馳走様でした」


私たちは店主が取りやすいようにカウンターの上にラーメンの空き皿を置いてそのままお店を出た。お会計はもちろん最初の時点でチケット販売機から済ませてある。


「美味しかったですね〜」なんて言いながら私たちは帰路についた。



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