「センパイ、介錯人お願いします」
「あ〜〜〜! 楽しかったァ!」
ぐぅうっ、と背伸びをして猫カフェを出る。フリータイムにしたため時刻はもう夕方だった。部活帰りだろうか。私の学校の生徒がチラホラと見つかる。
「楽しかったですね、センパイ」
「えぇ。癒されました」
ニコニコと笑うセンパイに私も思わず笑みがこぼれてしまう。
しかし、本当に癒された。猫ちゃんという生き物はあんなにも癒し効果があるものなのか。今度はえみとも行ってみよう。
そんな事を考えながら私は「この後、どうしますか? 帰ります? それともカフェとか入ります?」とセンパイに聞く。
「そうですね。優良さんが良ければ夕飯も兼ねてどこかに入り、そのまま今後の事も決めたいですね」
「“今後”………」
分かっている。“今後の事”というのは“冬休みの事”であり、とどのつまり“お泊まりの事”なのだ。きっとそうである。だってまだ何も決めていないし(しかしママに話して許可はもらっている)、私の心構えだってまだだ。
「大丈夫ですか?」
視界にセンパイが入ってきて私はハッ、と我に返る。どうやらセンパイが続けて話していたらしい。センパイの言葉を無視するなんて万死に値してしまう。
「うぐっ。すみません…ッ! 切腹します…っ!」
「介錯人は必要ですか?」
「お…っ、お願い、します…っ!」
「ふふ。なんて、冗談ですよ」
センパイはそう言って笑う。どうやら話を聞いていなかった事は気にしていないようだ。良かった。それでも今後は気をつけなければ。私が気にしてしまう。
「優良さん、行きましょうか。夕飯は何にしますか?」
「なんか今のセリフ、新婚さんみたいですね! もう一度お願いします!」
「優良さん、もう帰りましょうか」
「ごめんなさい! ラーメンが食べたいです!」
私が慌ててそう答えるとセンパイは面白かったのか口元に手を添えてクスクスと笑った。
「分かりました。ラーメンにしましょうか」
「センパイ、センパイ! 私お腹空いたので三郎系ラーメンがいいです!」
「食べられますか?」
説明しよう! 三郎系というのはニンニクマシマシの野菜マシマシの! とにかく全てかマシマシの量の多いラーメンの事である! お腹が空いてなかったら絶対に食べられない量だぞ!
「食べられます! 大丈夫です!」
「フラグにならなければいいんですが…。分かりました、三郎系にしましょうか」
「やったぁ! 駅前にあったはずです! 行きましょー!」
わくわくしながら私はセンパイと一緒に駅前にある三郎系ラーメンへと向かった(手を繋ごうとしたが恥ずかしくてやめたのは内緒)。
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