「えみ、失礼だよ!!!」
「けっっきょく…マフラー買わなかったし…」
ショッピングモールを回って2時間弱。ひとまず休憩、といって入ったカフェでえみは私の事をじっ、と見つめた(睨んでいるとも言う)。
じっ、と見られている事に対して心当たりが物凄くあるため私はやや苦笑いを浮かべながら「ごめん」とだけ謝っておいた。
「いや謝らなくていいよ。それよりもうちが気になってるのは…」
私から視線を外し、私の隣の席に置いてある袋を見つめるえみ。
その視線に耐えられなくなり、ズズズッ、と音を立ててアイスティーを飲む。少し甘さが足りなかった気がしたがこれも大人への第一歩。
「あのさなんでそんなに買ったの?」
そう言って指差されるのは私の荷物。
───おニューの下着である
えみが言いたいのはよく分かる。痛いほどよく分かる。なぜなら私も思っている事だからである。それでも私がおニューの下着を買ってしまった理由。女子ならきっと分かってくれる。
「セ、センパイと…」
「うん」
「そういう事になった時にスイーツ柄とかだと萎えると思いまして…っ!!!」
心の叫びを周りの人の迷惑にならない程度で叫ぶ。
しかしそんな私の心の叫びとは裏腹にえみの視線は氷点下を超えていた。ヒュウウウッ、とえみの周りに吹雪が舞っている気がするのは恐らく気のせいではないだろう。
「………へぇ」
低い…! 思っていた何十倍も低い…! 普段のえみはクールであまり表情を出さないが今日(というよりここ10分ほど)のえみは全く何を考えているのかが分からない! 普段なら少しだけ分かるのに! 怖い!
「え、えみも分かるでしょ…? いざ! 出陣! って時にスイーツ柄は…なしでしょ?」
「まず“出陣!”って…。……まぁ分からない事もないけど先輩はそういうの気にしないと思うよ」
「いやいや…。そのセンパイが“あっ”みたいな表情してみな? もうセンパイから破局宣言だよ。死ぬよ。死ぬ」
「優良は何となく本当に死にそうだから怖いよね。ストーカーもしてたんだから」
「してない」
そこはキッパリと否定しておいて私はマフィンに手を伸ばす。しっとりとした中にほのかな甘みがあり、ここのカフェはスイーツにも力を入れている事が分かる。
「それよりも…」
そう呟いて私はそっぽを向く。
スイーツ柄でセンパイが萎えてしまうよりもおニューの下着を買う事で懸念していた事があった。
「ん?」
「黒とか大人のお姉さんって感じでセンパイの性癖歪ませないか心配…」
「お前の性癖をまず何とかしろ」
「失礼過ぎる!!!!!健全ですけど?!」
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