「えみ、適当すぎる!」


「……………どうしよう」


「いや、“どうしよう”って言われても」


「当然…あれだよね…」


「まぁ……。そうだろうね」


えみとマフラー探しの旅に出ていた私は意を決してえみに昨日センパイに言われた事を相談したのだ。


結局昨日はすぐに私の家に着いてしまってそのまま「それでは」と解散してしまったのだ。センパイはらしいと言えばセンパイらしく、意味深な微笑みを浮かべていた。


さて。そんなセンパイにお誘いを受けたのだからそれを受けたいのは山々なのだが、お泊まりといけばもちろんが起きるわけで。


朝の登校からお昼ご飯、放課後の部活。

センパイに会う機会は幾度となくあったが漏れなく全てガチガチに緊張してしまった。部長にはケラケラと笑われ、何かあったのでは? と勘ぐられる始末である。


「あっ! えみ! これなんてどうかな!」


パッ、と目に付いたランジェリーショップのショーウィンドウに飾ってある新作の物を指差してえみの方を向く。


私の指差したものは勝負下着、といえば恐らくは想像のつくような少し派手なもの。色は黒と落ち着いてはいるがデザインが大人な女性を連想させる。


「いや無理でしょ」


「即答!」


ふらっ、と体制が崩れたがなんとか持ち直す。


「そもそもそんなン着けてたらそういうの期待してますって言ってるようなもんじゃん」


「…確かに」


「シンプルでいいんだよ。シンプルで。新しく買い直す必要ないよ」


「…でもお子様パンツはダメだろうから…」


「………ごめん。普段どんなの着けてんの?」


「スイーツ柄の…」


「ごめん、言わんでいい」


なんだよ。せっかく私の着ている下着について教えてあげようかと思ったのに。えみは最初こそ気になっていたようだが、私の「スイーツ柄の…」発言によって一気に興味を失ったようだ。なんて失礼な。


「それよりマフラーでしょ、探しに来たの」


どんな下着がいいのだろう、と入口近くに陳列されている物を物色しているとそれを見たえみがそう言ってきた。


そうだ。確かに今日の目的は下着ではなくマフラーだ。下着なんて冬休み前に改めて来て新しいのを買えばいい。


「そうだったわ。どこに行く?」


「んー…、テキトーに雑貨屋とか? 可愛いのありそうじゃん」


「そうだね!」


えみの提案により私たちはひとまずマフラーを探しに雑貨屋へ行く事にした。雑貨屋といってももちろんメインは雑貨屋な訳であって、質のいいマフラーがあるイメージはない。


それでもいいのだ。可愛いマフラーがあれば。機能性なんて二の次なのだから。


「とりあえず可愛いマフラー着けてセンパイに褒めてもらうわ」


「へーへー、そうですか」


「言い方適当!」



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