「えみ、好きな人いる?」
「ダウトすぎでしょ」
何が面白いのかそう言うとケラケラと笑うえみ。失礼にも程があるというものだ。私のどこに笑われるような性癖があるというのだ。
センパイの
えみはもしかしたら恋愛に対しては初なのかもしれない。
「それよりもえみは好きな人とかいないの?」
「いないね」
「気になる人は?」
「いないね」
凄く即答すぎて逆に驚いてしまった。だがしかしえみが他の男子と話しているのを私は見た事がないかもしれない。
そりゃ連絡事項とかで話したりしているのは見た事があるが、えみが個人的に話したくて話しているのはないかもしれない。
あ。いたわ。1人だけ。
「でもさ、部長は? 仲良さげに話してたよね?」
「“部長”…? ………あぁ。えみの部活の…」
一瞬分からなかったようだが、えみはすぐに部長の事を思い出した。といってもきちんと会ったのは一度しかないかもしれない。それで覚えているのだから上出来といえるだろう。
「そうそう。部長は? どう?」
「どう…って言っても…」
えみは言いづらそうにそう言うと視線を外しながらホットカフェラテを飲む。なぜそんなに言いづらそうにしているのだろうか。
「からかってくるけど悪い人じゃないよ」
「それは…そうかも、だけど……」
「ん?」
「清水先輩は……」
そこまで言ってえみはパタッ、と口を閉ざした。ただじっと私の方を見ているだけで何も言ってこない。それがあまりにも気まずく私はそっと手元にあったアイスティーを手繰り寄せる。
「………えみ?」
「いや。なんでもない」
それ言われるのが一番気になるんだよ! とは言わずに私はえみの言葉に「そっか」とだけ返す。
人には言えない事のひとつやふたつは必ずあるもんだ、とテレビで言っていた。きっと今のえみもそうなのだろう。
「優良は?」
「え?」
「優良は清水先輩の事、どう思ってんの?」
「……どう、思ってるって…」
ふわぁぁああ、と思い出されるのは部長にいじられた事ばかり。笑えるものからイライラしたものまで。最近でいうと「左手で描いてみなよ!」が一番イライラした(しかしそれは提案なだけであって結局左手で描く事を決めたのは私自身なのを忘れてはいけない)。
「凄い人だけど残念な人。よくいじられててイラッとしてる」
「まじか…可哀想に……」
「そうなの! 私可哀想だよね!! ほんっと失礼しちゃう人なんだよ」
「いや…清水先輩が……」
「…………え?」
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