「センパイ、寒いですね」


「えっ、え…? えーーーーっ!!!」


「最早潔いいですね…ふふっ」


驚いて声を出す部長に困ったように笑うセンパイ。


まるで地団駄を踏むように粉々になった雪だるまの下部を踏む私。はたから見たら気が触れたのかと思うだろう。だがしかし私は正常である。


「優良ちゃん…! どうしたの?! さっきまで壊してコノヤロウ! とか放送禁止用語炸裂してたのに!!」


「そんな事してませんからぁ! ただ下部だけあるのもなぁって思って踏みつけただけです」


「そんなサラリと言われても…」


部長はブツブツと何か言っているがこれで部長のサボりポイントが確保されたのだから良いではないか。センパイはというと私たちの会話を聞いて余程面白かったのか声にならないくらい笑っていた。


「ふふ…っ、ふふっ。優良さんは本当に…っ、面白いですね…っんふふっ」


「なんかそれ…嬉しくないんですけど…」


じっ、とそう言ってセンパイを見るとセンパイは「失礼いたしました」と言って笑いを抑える(しかし抑えきれていない)。しかしセンパイのレア度高めの笑いが見られたのでこれはこれでいい感じである。


そんな事を思いながら私とセンパイはさすがに寒い、という理由で屋上を後にしようとする。何せマフラーも手袋もなしできてしまったからである。


しかしドアに向かって振り返っても部長ほ来ない。それどころか部長は悲しそうに砕け散ってしまった雪を見つめている。さすがにそのままには出来ない、と私は部長に声をかけた。


「ほら! 部長! 帰りますよ!」


「でも…ォ、せっかく作ったのに…!」


「最初に頭部を壊したのは部長ですからね?!」


「ほら、帰るったら帰る!」と私は部長を呼ぶ。さすがに何回も呼んでいれば部長も諦めがついたのか渋々こちらへと歩み寄ってきた。


3人で屋上を出て、暖かい室内へと戻る。この空気の寒暖差で風邪を引いてしまいそうである。


「う〜〜っ。寒かったぁ…」


「風邪を引かないように気を付けてくださいね」


「はい!」


「はぁい…」


センパイの優しい心遣いに私と部長はそれぞれ返事をする。


それから美術室に戻り、私は早速と言ってはなんだがスケッチブックを取り出してを下絵を描こうとした。しかし雪が本降りになってきてしまい、断念。センパイと仲良く帰る事に。


部長はというと鍵を返すと言って一人で職員室に向かってしまった。部長が鍵を返すなんて珍しい(いつもはセンパイにお願いしている)と思いながら私たちは雪の降る中、校門を抜けて家に向かった。

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