「センパイ、お願いします!」
「部長、できましたよ」
パッパッ、と雪玉を固定する時に膝をついて付いてしまった雪を払いながら私は言う。部長はそんな私を見て「お疲れ〜」と手を振る始末。どうやら部長の手のひらは多少は暖かくなったようだ。
「じゃあ次は頭作ってあげよっか! 俺、もう手ぇ大丈夫だから2人は休んでて!」
部長はそう言うと「しかし…」と困り眉をするセンパイと私の背中を押して地面に座らせる。頭は小さくするつもりだし大丈夫だと言う部長の言葉に甘えて私たちは見守る事にした。
実は手が赤くなり痛かったのだ。もしかしたら部長はそれに気づいてたのかもしれない、なんて思ってみた。
しばらくぼぅっと部長を見る。最初は手のひらほどの大きさの雪玉を今度は足で転がす。なるほど。多少の大きさならば足で転がしてもそう易々とは壊れないだろう。
そうして作れた大きな雪玉を3人がかりで最初に作った雪玉に乗せる。最初に作った雪玉が少し大きかったというせいもあるのかやや不格好な雪だるまになってしまった。
「ありゃ」
「これは…少し不格好ですね」
部長とセンパイも同じ事を思っていたのかそんな感想を言っている。美術に長けているはずの美術部員(内訳:部長、副部長、連続入賞者1人ずつ)のはずなのだが…。ここは敢えて何も言わないでおこう。
「ま、まぁ…久々の雪だるまにしてはいいんじゃない?」
そう部長は言うが果たしてそれが本心なのかは分からない。恐らく違うだろう。
だがしかし、久々に雪だるまを作るとなると綺麗なものは作れないという事だけでも知れたのならこれから書く絵にも少しは役立つというものだ。せっかくだし、とパシャリと写真を撮ると部長も携帯を取り出した。
「ねぇ! どうせならみんなで写真撮ろーよ!」
「えっ。私、素材で写真撮ったんですが…。それにこんな不格好の雪だるまと写真なんて…」
「いーのいーの! 記念じゃーん!」
部長がそう言うと同時にパシャッとシャッターの切られる音。
乙女を勝手に撮るなんて言語道断。盛れる角度とかあるのに! と怒ってもきっと部長には伝わらないだろう。そんな事を思いながら髪を直す。
雪玉を転がすのに必死で髪が少し乱れてしまっていた。それに上から降り注ぐ雪のせいで頭の上にも雪がほんの少し積もってしまっていた。
パッパッ、と髪を直す私に伸びてきたのはセンパイの手。優しく私の頭に乗っていた雪を落としてくれる。
「ありがとうございます、センパイ…っ!」
センパイに撫でられたようで心地のいい私は「もう少しお願いします!」と言ってみるが「もう雪は付いていませんよ?」とマジレスをされてしまった。悲しみ。
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