「センパイ、コロコロしましょうか」
「それじゃあ、優良ちゃんの絵のために俺、協力しちゃう!」
部長はウキウキな声でそう言うとバッ、と立ち上がって私を見下ろした。その瞳はキラキラと輝いていて何やら案があるらしい。
「何か案があるんですか?」
「ん? ない!」
ワクワクしながら聞いた私が馬鹿だった。
ガクッ、と項垂れる私を他所に部長はクルクルと回りながら楽しそうに空から降る雪を眺めていた。それはまるで純粋無垢な子供のようで私は部長らしいな、と思う。
「そうだ! 優良ちゃん! 栄一くん! 雪だるま作ろうよ!」
「雪だるまですか。長い事作っていないのでちょっと…」
「はい! 決まり! 早く下降りよ!」
センパイの話なんて聞かずに部長はそう決定するとハシゴを使って屋上に降りる。おいおい、センパイの話聞いてくださいよ!
ドサッ、と雪が積もった屋上にハシゴから飛び降りて上にいる私たちに手を振る。そんな部長を見下ろしている私たちは小さくため息を吐いてからゆっくりと下りた。
私たちが屋上に下りると部長は既に小さな雪玉を膝をついて転がしていた。
「あははっ、俺雪だるま作るの久々〜!」
なんて言いながら部長は雪玉をコロコロと転がし大きな雪玉を作っていく。
「ほらほら、2人も手伝って〜!」
部長はそう言うと私たちを手招きした。私たちは顔を見合わせてから部長の元へ行く。
「えぇ。分かりました」
「上手に出来ないと思いますけど…。作るならちゃんとしたものを作りますからね!!」
コロコロと雪玉を転がす部長にビシィッ! と(失礼ながら)指を差してからタタタッ、と部長に駆け寄る。
雪玉を転がしている部長の手をよくよく見てみると真っ赤になっていてとても痛そうである。手袋、なんてこの人の頭の中には無さそうだ。
「清水部長、手が赤くなっていますよ」
部長の手にセンパイも気づいたのか心配そうに声をかける。そんなセンパイの言葉に部長は自分の手のひらを見て「ありゃ」と声を漏らす。
いやいや、その前に気づくでしょうが。普通は。
と口に出したいのを我慢しつつ私は「部長は手を温めてください」と一旦場外へ。
残された私とセンパイでコロコロと交代でゆき転がす。その間部長は息で手のひらを温めたり、とても暇そうにこちらを見ていたりしていた。やりたそうな目で見てきているが手が戻るまではダメである。
そうこうしている間に私の腰くらいまで雪玉が大きくなった。今作っていた雪玉は雪だるまでいう下の段の雪玉であるためこのくらいでいいだろう、ととりあえず固定する。
せっかく作ったのにコロコロと転がられても大変である。
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