「センパイ、寒いですね」
「わっ…! 中にいる時よりも寒いですね!」
美術室を出て昇降口で待ち合わせをした私たちは無事に合流して雑談をしながらまずは校庭へと向かう。
「あー…、やっぱり野球部が外練してますね〜」
やはり私の予想通り校庭には野球部などの外でやる部活の部員たちが練習をしていた。見る限り校庭には部長はいない。
「そうですね…。清水部長の姿もいませんし…」
キョロキョロと周りを見ながらセンパイはそう言って困ったように眉を曲げた。
「次に行きましょうか」
「心当たりあるんですか?」
「まぁ…恐らくここじゃなければ屋上かと…」
センパイは「いつもそこにいるので…」と呟きながら踵を返して裏庭へと向かう。その後ろ姿を慌てて私は追う。センパイの後ろ姿まじで素敵すぎる…! 至福の時…っ!
というかそもそもこんな雪が降り積もっているため屋上なんかにいたら危ないと思うのだが。部長は頭が少し、ほんの少し、いやかなり? いいや、ほんのすこーーしだけ残念だからその可能性もあるか。
「そういえば…」
センパイと屋上に向かうため外から再び室内へと戻ってきた後、廊下を歩きながら私はとある事を思い出した。
「どうかしましたか?」
「屋上の扉についていたチェーン…というか鍵なんですけど、壊れていたんですよね。あれって部長がやってたりして…」
「いえ。確か清水部長が屋上に出入りする時には既に壊れていたらしいですよ。最も壊れていなかったら壊すつもりだったらしいですが」
「なんて野郎なんですか、部長は…」
でも確かに部長ならやりかねないな、と思いながら私たちは屋上へ。
屋上へ着くとやはり壊れている鍵をチェーンが支えていた。扉の近くに積んである作業用ダンボールの隙間にはセンパイの私物であるレジャーシートが挟まってあった。
そして扉の向こうからは部長の歳不相応の声が聞こえるかと思っていたが声どこか音もしなかった。不思議に思いながら扉を開けるセンパイの後ろに立つ。
「部長いますかね…?」
扉を開けて屋上を見るが部長はいない。しかし降り積もった雪に足跡が付いていて部長は右にあるハシゴに登ったようだ。ハシゴの雪も少し落ちている。
また入口の屋上で遊んでいるのかとため息を吐きながらセンパイ、私の順でハシゴを登る。
「清水部長、いますか?」
センパイがそう声をかけるとやっと部長の声が聞こえた。
「あり? 栄一くんに優良ちゃんじゃん。どーしたの?」
私も入口の屋上に登り、部長を見る。
部長は中央に足を広げて座り、両手を後ろについて、そしてあっけらかんとした表情でこちらを見つめていた。
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