「センパイ、優しいですね!」
「………無視、します?」
「おや。それは可哀想じゃありませんか?」
「でもこんな事する人なんて限られてません?」
「限られてますね」
そんな会話をしながらじぃっと今だに壁を叩いている人物を見つめる。いつまでやるのだろうか、と思っているとピタッ、と窓を叩くのをやめてパッ、と顔を出した。
「もー! ビックリしてよ!」
「いや、無理があるでしょう、部長」
やや曇って聞こえるが所詮は窓ガラス1枚隔てた向こう側。聞こえない事はない。
私は呆れながらそう言って窓を開けた。と同時に寒い空気が入ってきて少し身震いしてしまう。さすが雪が降っている事だけはある。
「さむっ」
「雪降ってるから雪合戦しない?!」
「子供ですか! 却下です! ねぇ、センパイ!」
「えぇ。そもそも先生たちに今後の事を聞いてきたのでは?」
センパイがそう聞くと部長はハッ、とした顔をして「そうそう!」と口を開いた。
「電車通学とか自転車の子は帰ってもらって、歩きの子は帰りたかったら帰る。でも吹雪いてきたらみんな強制的に帰って、だって!」
「それをまず美術室にて言ってからの先程の行動だと思うんですが…」
「あははっ。ま〜いいじゃん。細かい事は。栄一くん言っておいてよ!」
部長は笑いながらそう言うとセンパイの返事も聞かぬ間にたった一人、ピューッと校庭へかけて行った。今校庭へ行っても野球部とかの外練をしている生徒がいるだろうに。
「センパイ、どうします?」
「ひとまずは部員の皆さんにお知らせをしてからですね」
「センパイお疲れ様です」
「ありがとうございます」
センパイは踵を返すと部員みんなに部長が話していた事を部長よりも分かりやすく伝える。
その間、私はどうしようかと考えていた。私は徒歩通学のため帰りたかったら帰る組である。最もセンパイも徒歩通学のためセンパイの判断に一任する形なのだが。
「センパイ、センパイはどうします?」
みんなに伝え終わり、各自が各々の準備を始める中、私はセンパイの元へ駆け寄ってそう聞く。
「僕はまだ少し残ろうかと思っています」
「それじゃ私も残ります!」
「分かりました。ひとまずは部長を探さないと行けませんね。あの人、鍵を持ったまま遊びに行ったようですし」
「落としたら切腹ですね」
「全くです」
しかしこんな会話をしているが、部長がどこにいるのかが全くわかっていないのである。ひとまずそんな部長を探すために私たちは美術室を出る。
「それでは校庭から探しましょうか」
「見つからなかったらどうします?」
「その時は仕方がありません。帰ってくるまで待ちましょう」
「センパイ優しすぎませんか?」
「ふふ。僕はいつでも優しいですよ」
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