「部長、まじですか?」


「……決まらぬ…」


部室で私は悩んでいた。その原因は部長から全部員に渡された一枚の紙。冬のコンクールについてが書いてあるものだった。聞いたところ、冬のコンクールはこの時期になると希望者を募って参加するらしい。


私も特に描きたいものもないため参加しようとしたのだが。


今年のテーマが『冬』って何?!大雑把すぎるでしょ!! そんな事言われても分からないって!!!


困り果ててしまっている。


「もうダメだ…、描けない…。どんな感じにするとかみんなどーやって決めてんのよ…」


シクシクと私は机に顔を伏せて考える。グルグルと頭を回転させているととてもいいアイディアが思いついた。バッ、と顔を上げてバッグから持ってきていたスケッチブックを取り出し、そのまま部長の前まで歩く。


描くものが決まったら一度、部長か顧問の先生に相談するのがルール、というかうちの美術部の流れである。ピタッ、と部長の前まできた私はじっ、と見つめる。


「な、何…? 優良ちゃん…?」


「決まりました! 部長!」


「おっ! 今回は早いね〜。どんなの?」


「これです!!!」


そう言って私はババーンッ! と真っ白なスケッチブックを部長に見せる。


「今回のテーマは“雪”ですっっ!」


「却下」


「却下ですね」


「えぇっ?!」


まさかの隣に座って話を聞いていたセンパイまでもが却下を口にするとは思ってもいなかった。センパイは何やら難しそうな資料を読みながらだったから聞いていないとは思ったが甘かったようだ。


というか部長はなにニッコニッコな笑顔で“却下”って言ってるんですかねぇ?! この人、普段は全く絵なんて描いてませんけどぉ?!


「優良さん、この前も…その前だってそれで乗り切ろうとしてダメだったでしょう?」


「いや〜。今回はテーマが“雪”だからいけるかな、って…」


「優良ちゃんまじポンコツ、ウケる〜」


「ぶっ飛ばしますよ、女顔先輩!」


「俺の扱いおかしくない?」


涙目でそう言う女顔先輩は放っておいて私は踵を返して席へ戻る。それから真っ白なスケッチブックを再度見てから適当にアタリを付けていく。


冬と言ったらやはり雪かな…。それともコタツか…、カマクラもあるよね…。……カマクラか…、いいな。


適当にアタリを付けていた線はやがてカマクラとその周りにある雪だるまに変わっていく。しかしこんな安直な絵では最優秀賞を取るどころか佳作も怪しいものだ。


「やる気の出る事…ないかなぁ…」


「それじゃ…」


不意に後ろから声をかけられた。


「描こうか? 俺も」


振り返るとそこにはやや笑顔の部長が立っていた。



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