「センパイ、それはちょっと…」


「……………」


終わっっったわァァ………!!!


フラフラとした足取りで私は美術部へ向かう。

死ぬほど長かった地獄のテスト期間が終わり、私はやっと(テスト勉強期間も入れて)二週間ぶりに美術室へ入る。久々の美術室。何ら変わりはないがいつもの日常が本当に大切なのだと気付かされる。


「テストは終わったけど…もういいか…。もう終わっちゃったし…」


なんて言いながらいつもの定位置に座り、グダっと机に顔を伏せる。今日の活動はなんだろうか? コンクールの課題もやらないといけない。いや、それよりも赤点の心配だ。赤点を取ってしまったらセンパイに顔向けできない。


───「優良さん、せっかく僕が教えたのに赤点を取ってしまったのですか?」


───「そっ、それは…!」


───「おやおや。これでは冬休みのお泊まりデートが出来ませんね。お別れです」


───「そっ、そんなァ!」


と、なりかねない。もしそんな事が起きてしまったら私は死ぬしかない。センパイのいない世界でなんか生きていられない。死んじゃう……。


なんて思いながら私は頭を抱える。


「おや、優良さん。こんにちは」


噂をすればなんとやら。

ゾロゾロと美術室へとやってくる部員の中にセンパイがいた。私はチラリ、とセンパイの方に視線を移してから体を向ける。


「………センパイ…」


「今日はなんだか元気がありませんね。どうかしましたか…?」


「実は…」


そう切り出して私はセンパイに物凄くテストの出来が悪かった、赤点だったらセンパイと冬休みに会えないかもしれない、と告げる。するとセンパイはくすくすと笑って私の隣の席に座った。


「そんな事でしたか」


「そんな事じゃないですよッ!」


センパイにとっては赤点なんて縁のない話かもしれないが、私にとってはめちゃくちゃ縁のある話なのだから。もしかしたらセンパイ、赤点を知らない説がある。


「大丈夫ですよ。もし赤点を取ってしまったら、その時は僕も学校に行きますから」


「え?」


「赤点補習の前か後に復習と予習をしましょうね」


「センパイ…?」


「大丈夫です。今度はみっちりと教えますので赤点補習の赤点なんてさせませんから」


そう言ったセンパイの顔はとてもキラキラとしていて輝いて見えた。

しかし言っている事はつまり、赤点を取ってしまった場合、補習授業の他にもみっちりと勉強会があるという事だ。


「あの、勉強会じゃなくてデートしませんか…?」


「もう赤点を取らないために頑張りましょうね、優良さん」


「アッ、ダメだこれ。話聞いてない」

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