「センパイ、教えてください!」
「えっと…、ここは……代入? いや…違うか…」
ブツブツと独り言を言いながら私は自室にある勉強机で問題を解いていく。普段楽して授業を全くと言っていいほど聞いていなかったのがここで仇となってしまった。くっそ。
ほとんど進んでいないノートにペンを走らせて携帯をいじりたい欲を抑える。ここで携帯を見てしまったらネットサーフィンの波に揉まれてしまう。そんな事になったら今日は寝るまで携帯を離さなくなってしまうだろう。それだけは避けたい。
「ん〜…、っと…。マル、マル、バツ、バツ、バツ…バツ……バツ……」
最初の簡単な問題のみ当たりで他はことごとくバツ。ノート一面に私のバツがついた所で席を立った。
なぜ間違ったのかは少し休憩してから、と私はベッドにダイブする。ぼふっ、と音を立ててベッドに沈む。
もう勉強したくない。勉強ってなんでするんだっけ…? そりゃ大学入るためには必要だけど…。あーー、本当に私…センパイと同じ大学行けるのかな…。
センパイは七夜大学には手が届かないと言っていたがきっと最終的には届くのだろう。そうしたらセンパイとは違う大学になってしまう。
「無理ゲーすぎて笑える…」
ゴロン、と寝返りを打って天井を見つめる。そんな時だった。携帯が鳴る。
アプリからの電話だ。
慌ててベッドから起き上がって携帯を掴み、見てみるとセンパイからだった。
やばい、勉強してなかった…、と思いながらも電話に出る。
「はい! こんばんは!」
《優良さん、こんばんは。…すみません、急に電話てしまって…》
電話先のセンパイの声はいつもよりも若干低く感じられる。そんなセンパイの声にドキドキしながら私は答える。
「いえ! 大丈夫です! むしろ嬉しいです!」
《ふふ。それなら良かったです。勉強、捗っているかと思いまして…、どうですか?》
そんなセンパイの質問に私は「あー…」とだけ答える。私のその答えだけで全てがわかったのかセンパイはクスクスと笑う。
《そうでしたか。まぁ息抜きも大切ですから僕もこうして息抜きに電話したんです》
「そうだったんですね…! いやー、実は私も息抜きしていたんですよ! 数学全く解けなくて…」
そう言いながら机に戻り、再度バツだらけのノートを見つめる。
《おやおや。基礎は出来ているんですか?》
「え? まぁ…、最初の問題はマルですが…」
《それでしたら解けない問題の解説を先に見てみるというのはどうでしょうか?》
「え、そんな事していいんですか?」
《練習問題を解いているんですからやり方は自由ですよ。僕も分からない問題は先に解説を読んで納得してから自分で解いています》
そんなやり方があったのか、と感心しながら私は問題集の答えを引っ張り出す。
「なるほど…。ちょっとやってみますね!」
《はい。…本当は僕が直接教えてあげられたら良かったのですが…》
「明日また教えてください!」
《はい。僕でよければ》
やった! とガッツポーズをして、それから他愛のない話をしてその日は電話を切ったのだった。
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