「部長、まじ帰れ」


「あっれ〜? 2人で勉強中?」


ひたすらノートに数学を解いていく、という作業をしていたら上から声をかけられた。パッ、と顔を上げてみれば部長が私を見下ろしていた。


おい、何見下ろしてんだ! とは思ったがここはあえて言わないで首を縦に振る。


「はい。部長もですか?」


そう聞いてみると部長もそのようで「まぁね」と言って私の前の席に座った。てかセンパイとのイチャイチャな勉強会(仮)を邪魔しないでいただけますかね?


「張り切っていますね、清水部長」


「まーね。大学受験前の最後のテストだし。それなりに頑張ろうとは思ってるよ」


部長はそう言いながらノートを広げてテスト勉強をし始めた。どうやら本格的に邪魔をするようだ。よろしい、ならば戦争クリークだ。


「そうですね。清水部長に留年されては困りますから…」


「それどういう意味だろう、栄一くん…」


「清水部長の担任の先生から口酸っぱく言われていましたから。留年の危機、だと」


「ぶちょー、りゅーねんの危機なんですかぁ? クソワロ」


ニタニタとした笑顔を貼り付けながら私がそう言うと部長は「ちーがーうーしー!」と反論してきた。しかしここが図書室なのをわかっているのか、その声はいつもよりも小さかった。


「俺は考えがあって授業に出なかったの!」


「それで留年しては元も子もないのでは?」


「センパイ、今の部長にド正論はキツイですって」


グサグサとセンパイのド正論が効いたのか部長は小声ながらも「ちゃんと授業に出まーす」と言ってくれた。それでいいんですよ、部長。これ以上センパイの手を煩わせないでください。マジで。


これでセンパイと2人っきりの(ではなくなったが)勉強会が再開できる、とホッとした。


しかし本番はここからだった。


「栄一、ここ分かる?」


「なぜ3年生のテスト範囲を僕が教えられるとでも…?」


「そっか〜…。え〜っと……。この公式が…ここで…、ん? えっと…」


「…………ここ、計算ミスしていませんか?」


「あっ! 本当だ〜。栄一くん、サンキュー!」


「お役に立ててよかったです…」


なぜ部長がセンパイに教わってるの?! 部長は3年生のはずだけど!? なんでセンパイか教えられてるの?! チラッと参考書見れば分かるの?! 何それ! 天才じゃん!! ってか私とセンパイの勉強会なのに! なんで部長インだよ!! 帰れ!!!


「優良さんは大丈夫ですか?」


「センパイ! ここ分かりません!」


「栄一くん〜、それ嘘だよ。さっきまでサラサラ解いてた」


「女顔先輩は黙ってて!!」



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