「えみ、食べ過ぎ」


「へー! で、これがそのお土産?」


センパイとネズミーランドに行ってから初めての月曜日。えみはそう言いながら私が差し出したお土産─ネズミーのフィギュアの中に入っているお菓子─を掲げてまじまじと見た。


「そうそう! どう? 食べたあとでも飾っておけるし、可愛いーって思ってさ!」


「そうだね、めっちゃ可愛い。えっ、これうちが貰っていいの?」


「もちろん! そのために買ってきたんだから」


私がそう言うとえみは「まじか、ありがとう!」と嬉しそうに言った。えみの嬉しそうな顔は普段の顔と何ら変わらないが私には分かる。これは嬉しい時の顔だ。


「食べていーい?」


「いーよ!」


ネズミーのフィギュアの中にはチョコのお菓子が入っているようだ。えみは貯金箱からお金を取るようにフィギュアの底からチョコを2つ取る。


「はい」


「え、私もいいの?」


「うちが食べてるところだけ見てるつもり? どーぞ」


「それもそっか…。それじゃ貰うね! ありがとう〜」


えみからチョコを貰って私は袋を開け、口に放る。うん。美味しい。甘いけどドロドロの口に残る甘さじゃない。


「これ美味しいね〜。イチゴ?」


「うん。優良にあげたのはイチゴ。他にはチョコ、ホワイトチョコ、ビターチョコがあるみたい。うちはビターだったみたい」


「ビター食べるとかおっとな〜!」


「まー。うちは優良と違って大人だからなぁ」


「私と違っては余計なんですけど」


「あ〜らら。それは申し訳ない」


えみは到底そんな事を思っていなさそうな声色でそう言ってまたチョコを放った。モグモグとそれを食べながら「そういえば」、と思い出したように口を開いた。


「そういえば、アイコンも先輩とのツーショだったよね。まじやばい、本物のカップルじゃん」


「えっ! 何言ってんの! ずっと本物のカップルなんですけど!」


「えぇ〜。うっそ〜〜」


えみはケラケラと笑いながらまたチョコを頬張る。これで3つ目。


え、めっちゃ食うじゃん。ここでえみに「太るよ」なんて言ったら怒られるんだうなぁ。


なんて思いながらえみにネズミーランドで撮った写真を見せようと携帯の電源を付ける。パッ、と映し出るのはお城の前でセンパイが私の両頬を包み込んで見つめあっている写真。


これはかなりのお気に入りである。


「うわっ。待ち受けもカップルみたいじゃん」


「カップルなんだよなぁ。えみは気づいていないかもだけど」


全く、本当に失礼しちゃう人なんだからと思いながら私は写真フォルダーを開く。すると画面一面にセンパイと撮った写真が映る。


「でもいいよね〜、ネズミーランドかぁ」


「えみ、普段からツンケンしてて彼氏欲しそうにしてないよね。今だって“彼氏かぁ”じゃなくて“ネズミーランドかぁ”だったもん」


「高校で彼氏とかまだいいかな〜。それにうち、彼氏なら年上だから同い年はナシ」


「センパイ狙うなよ」


「ちょっと。声低っ。ガチトーンじゃん、怖…」



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