「センパイ、嬉しそうですね!」


「優良さん、今日は楽しめましたか?」


家までの道のりをセンパイとノロノロと歩いていると不意にそう聞いてきたセンパイ。私はその問いに間髪入れずに首を縦に振って答える。


「はいっ! とても楽しかったです! 最初は登山かと思ってたのでびっくりしましたけど…」


あはは…、と頬をかくとセンパイはクスリ、と笑って続けた。


「僕自身、デートの計画を立てるのが慣れてなくて、その場で行きたいところを考えるなど拙い部分もあったかと思いましたが、喜んでいただけて良かったです」


「そんな! 私なんていつも思いつきなんですから! また行きましょうね!」


「えぇ。ぜひ」


センパイはそう言って笑った。


センパイと付き合って三ヶ月。たった三ヶ月だけど、私にとっては濃い三ヶ月だった。この先もセンパイも一緒にいたい。そのためなら私はどんな事だってするつもり。


来年にはセンパイは三年生になっちゃって、今よりも構ってもらえる時間がグッと減るだろう。


「センパイ」


「何でしょう?」


「来年もこうしてデートしましょうね!」


これは願掛け。これを言う事で来年も変わらずデートが出来る願掛け(もしかしたらフラグになっちゃったかもだけど)。


「はい、もちろんです」


ニコッ、と笑ってそう答えてくれた。

本当に来年も今年のようにデートができるかは分からないがその答えだけでも今の私には嬉しくて。


「ありがとうございます!」


本当に来年もこうして変わらずデートができているといいな。


そんな事を考えていたら私の家まで着いてしまった。めちゃくちゃ早い。どうしてセンパイと歩いている道はこんなにも短く感じてしまうのか。一生の謎である。


「センパイ、今日は本当にありがとうございました!」


家の玄関前。私はセンパイの方を振り返って頭を下げた。センパイはというと「こちらこそありがとうございました」と応え、私にぬいぐるみの入った袋を差し出した。


「こちら、僕からのプレゼントです」


「プレゼントも本当にありがとうございます。何もお返しできなくて…」


「それなら今からでも間に合いますよ」


センパイはそう言うとスッ、と携帯を取りだした。え、まさかさっき言っていた事、本気なんじゃ…。


「セルフで撮る時は内カメ、というので撮るらしいですよね」


「あ、あの…、センパイ…?」


「優良さん、本日最後の写真撮りますよ」


「ま、待ってくださいっ。ここ家の前で…」


「おや。撮ってくれないんですか? 悲しいですね…」


「うっ」


センパイは確実にわかっている。私がセンパイの嘘泣きに弱いのを。


嘘泣きとはいえ、泣いているセンパイを放置するほど酷い人でもないため、私は渋々センパイが差し出した携帯を受け取ってカメラを見る。


「あの、これ純正カメラじゃないですか!」


「いけませんか?」


「もー! 純正じゃなくてアプリのカメラでお願いしますっ。私の携帯で撮りますけどいいですか? 後で送るんで!」


「はい。お願いします」


私はセンパイに携帯を返し、ぬいぐるみを取り出して抱っこする。それから自分の携帯のアプリカメラでセンパイと一緒に写真を撮る。


パシャ。


暗いし、場所は住宅街だしで全然映ていない写真だがそれを見せた時のセンパイの反応がとても嬉しそうだったから良しとしよう。



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