「センパイ、それはダメです」
「もう……」
クスクスと笑いながらハッキリとそう言うとセンパイは私の頬に手を添える。
「顔真っ赤ですね」
「それは……」
と、言いかけて口を閉じた。
──それは当たり前じゃないですか
なんて。そう言ったら余計に顔が赤くなってしまうから何も言わない。そして顔が真っ赤になったらまたセンパイがいじるに決まっている。
今はただ、くるくると回りながら上下に動くこのメリーゴーランドが早く終わる事を祈る。乗りたくて乗ったアトラクションに早く終われ、なんて願うなんておかしいけれど。
それからほんのしばらくしてメリーゴーランドが終わる。
ゾロゾロとみんなが木馬から降りて帰るのを横目に私もセンパイに降ろされる前に降りる。さすがに二度もセンパイに乗り降りを手伝ってもらう訳にはいかない。
「さァ、センパイ! 今からはお楽しみのお土産ですよ!」
「そうですね。一番大きいお土産ショップに行きましょうか。大抵のものは揃っているらしいですので」
メリーゴーランドから降りてそんな話をする。センパイの言う一番大きいお土産ショップとは入り口付近にあるらしく、今の時間帯なら人も少ないようだ。
「それではそこに行きますか〜!」
「はい」
現実からネズミーランドへと移るこの入り口付近は魔法がかけられたように地面の床にキラキラが描かれていたり、壁に妖精がいたりと、ここもデザインが凝っている。
そしてそのキラキラや妖精が夜になるとほんのりと光を放つのも有名である。私たちはその妖精たちが振りまいた魔法の粉を楽しみながらお土産ショップへと足を進める。
「綺麗ですね〜」
「えぇ。作りは西洋の建物のようですが、至るところに妖精がいたりと非現実的な面もあり、とても素敵ですね」
「はい!」
そう答えながら私たちは一番大きいお土産ショップに足を進める。中に入ってみると天井にはシャンデリア。天井の壁には妖精がいたり、魔法の粉がキラキラと輝いていたりしていた。
「中も綺麗ですね〜」
「そうですね」
「お土産いいのありますかね?」
なんて言いながら私は近くの棚に陳列されているぬいぐるみを持ち上げる。可愛い…、ネズミーのお友だちだ。……ふむ。値段は全く可愛くないな。却下。こっちの一回り小さいのは……、ふむ。値段はまぁまぁだな。お財布と相談。
「これなんてどうです?」
ネズミーのお友だちを見ながら一喜一憂する私にセンパイは一番最初に見た値段が可愛くないぬいぐるみの倍…、いや3倍くらいする大きなぬいぐるみを抱き抱えてやってきた。
おいおい待て待て。最初のぬいぐるみだって大きさM(縦40cmほど)そこそこの大きさだったんだけど?!?!?!
「却下です! それ、LLくらいありません?!」
「3Lだそうです」
「元あったところに戻してきなさいッ!」
「おや。残念ですね…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます