「センパイ、話違くないですか?」


「Hey! Siriモードの僕、というのはよく分からないですが…」


「そういうところです」


私が即答で答えるとセンパイはクスリと笑った。「そうでしたか」とセンパイは言うと遠くを見ながら手の指先でクマのキーホルダーをいじり始める。

そんなセンパイを見つめながら私は口を開いた。


「今度また作りますね!」


「クマのキーホルダーをですか?」


「今度はまた別のものを。リクエストはありますか?」


「そうですね…」


センパイは考えるような素振りをしてから答える。


「僕でもできるものがいいですね」


「えっ? …センパイも作るんですか?」


「おや。いけませんか?」


センパイは少し悲しそうにそう言う。


いや、そうじゃなくて…。

なんでもできるセンパイだから私よりも凄いものを作りそうで…。


と、そう言葉にするとセンパイは「まさか」と私を安心させるかのように優しい声色で答えた。


「流石にキーホルダーなんて難しいもの、僕は作れませんよ。せいぜい授業レベルです」


「じ、じゃあ、私がセンパイに教えるって事ですか??」


「はい。…嫌でしたか?」


「いえ!!! 手取り足取り腰取り教えますよ!」


「“腰取り”の意味が分からないですが…。よろしくお願いしますね」


センパイ、“腰取り”は文字通り“腰取り”ですよ。…いや! 別にやましい気持ちなんて微塵もないですから! えぇ! ないですとも! 私は聖人なんでね! え? “聖人”が“星人”に聞こえる? やだなぁ! それは聞き間違いですって! もー!


なんて思いながら私は「よろしくお願いします!」と言った。


これでまたセンパイとの楽しみが増えた。なんのキーホルダーにするかはまだ決めていないが、それでもセンパイと何かを作るのは楽しみである。


授業レベルと言っていたから簡単なものがいいだろう。まずは百均にでも売っているキットから始めるのがいいかもしれない。


「優良さん」


「あっ、はい。なんでしょう?」


「この携帯カバー、付け替えてもいいですか?」


そうだ。クマのキーホルダーですっかり忘れていたが私があげたものは携帯カバーだった。そんな事を思いながら私は首を縦に振る。


するとセンパイは慣れた手つきで昔の携帯カバーを外し、新しく私があげた携帯カバーを付けた。それに倣い、私も携帯カバーを付け替える。


これでお揃いである。


「お揃いですね」


「えぇ。お揃いです」


2人で携帯カバーを見せ合いながら私たちは笑う。


「それではもうそろそろ5時30分なので行きましょうか」


センパイはそう言うとクマのキーホルダーを大切そうにリュックにしまった。


「そうですね! まだまだ乗りたいのもありますし! 今日は最後まで楽しむんですから!」


「え?」


「………え?」


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