「センパイ、綺麗です」
「暖かい…」
センパイが買ってくれたブランケットを肩にかける。…わぁ、もふもふしてる。
もっふもっふと何度もブランケットを触っている私を見てセンパイは笑う。
「ふふ。そんなに気に入ってもらえたなら良かったです」
「センパイ、これもふもふしてるんですよ! それが触り心地良くって!」
「えぇ。ブランケットの触り心地がいい事は重要ですからね」
そう言ってセンパイはブランケットを開けた際に出たゴミをまとめてゴミ箱に捨てる。
さて、今からどこに行こうかというところなのだが、もう5時になろうとしていた。意外にもブランケット選びで時間がかかってしまったようだ。
「センパイ、これから行く場所は──」
「僕、行きたいところがあるんですが…。いいですか?」
センパイは私の言葉を遮りそう話した。私は特段行きたいところやアトラクションがないため(昼間に全て回った)、ここはセンパイの行きたいという場所へ行く事にした。
「はい! もちろんです」
「ありがとうございます」
「それで一体どんなアトラクションなんですか?」
「アトラクションではないですよ。こちらです」
センパイはマップを見ずにそのまま歩き出した。マップは見ずとも分かる、という事なのだろうか。私は一体どこに行くんだろう…、と思いながらセンパイの後ろをついて行く。
しばらく話をしながら歩いていると遠くにあったはずのお城が見えてきた。夕方からライトアップされているお城はやはり昼間見たものとは違った印象を受ける。
「お城綺麗ですね!」
「えぇ。綺麗です」
センパイはそのままお城の前を通り過ぎて脇道に逸れた。その道はお城の周りを囲っている道で正面からお城は見えない。代わりにといってはなんだが、道の内側にある少し大きめの水堀には綺麗な水が毎回流れていて小鳥などが水浴びをしているところが見られる。
「ここです」
センパイは近くにあったベンチに腰をかけてそう言った。
センパイが行きたかったところ。それがアトラクションでも有名な写真映えスポットでもなく、お城の脇道という事に少し驚きを隠せない。
「ここ、ですか?」
「はい。ここです。結城さん、座ってみてください」
そう言うセンパイの横にとりあえず座ってみる。
そして私は驚いた。
「……………わぁ…!」
キラキラと輝く水堀。
その水堀に映る逆さ富士ならぬ逆さ城。
ライトアップされているおかげで水面がキラキラと輝き、その逆さ城をより美しくさせていた。
「………綺麗…」
「綺麗ですよね。僕も初めてネットで知った時は驚きました。でも…」
「“でも”?」
「結城さんと見る方が綺麗ですね」
そう言って私の方を向いて笑ったセンパイの方がこの逆さ城よりも綺麗だ、と私は思った。
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