「センパイ、Siriじゃないですか!」
「センパイ! 次! あそこ行きましょう!」
それから。ありとあらゆるアトラクションを時間の許すまで乗り続けた。
アトラクションを乗って、またアトラクションを乗って、少し休んで、アトラクションを乗って、またアトラクションを乗って、ポップコーンを買って…。
そんな事をして数時間。時刻、夕方4時半。
私の足は限界を迎えていた。
「………痛いです…」
涙目になりながら私は靴を脱ぎ、足を楽にさせる。靴擦れなどではなかったのが不幸中の幸いである。つまりは歩きすぎて足の裏が痛いのだ。
「大丈夫ですか? すみません、温かいお茶にしようも思ったんですけど、これしかなくて。」
センパイは片手に水を持ってきて私の隣に座り、それを差し出した。
「ありがとうございます…。というか! すみません。まだまだこれからなのに…」
その優しい行動にまた涙を流しながら私は水を受け取る。ひんやりしていて冷たいがそれを見越してかセンパイがタオルで包んでくれていた。どこまで優しいんだ、この人は。
「いえ。どこかで休まなければ、とは思っていたので」
「ありがとうございますぅうっ」
そうお礼を言って私はキャップを開け、水を飲む。喉を通る水が冷たくて思わず凍ってしまうのではないか、と思ってしまうくらい。それくらいに今の気温は寒かった。
「寒いですね」
そんな私の気持ちを悟ったのかセンパイはそう言ってきた。
「そうですね…」
私はそっと上着のポケットからセンパイから貰ったカイロを取り出す。もうすっかりと冷えていて温かい、というよりも冷たくなってしまっている。
「まだ持っていたんですか? てっきり捨てたのかと…」
「そんな! 捨てるわけないじゃないですか! これは持ち帰ってセンパイコレクションに入れるんですよ!」
「また変な事を…。カイロならまた差し上げますと言いましたよね?」
「でも……」
「ダメです。捨ててください。これ、新しいカイロです」
センパイはそう言うと新しいカイロを私に渡して古いカイロを受け取った。せっかくセンパイコレクションに加えられると思ったのに…。本当に残念である。
そんな事を思いながらもう封の切られたカイロをポフポフと揉みこんで温かくする(封が切られていたのも未開封だと私が使わない事を見越したからだろう。本当に鋭い人である)。
「温かい…」
カイロを頬につけながら私がそう言うとセンパイはマップを広げた。
「センパイ、またどこか乗りに行くんですか?」
「いえ。お店をちょっと…」
「欲しいものでもあるんですか?」
「寒いのでブランケットのようなものを買おうかと。…結城さんに」
「………………」
「…結城さん? 天を仰いでどうしたんですか?」
「………スパダリィ…」
「え? すみません、なんですか?」
「出たぁ。Siriモード…」
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