「センパイ、デレないでください」


「お疲れ様でした〜、こちらから参加賞をお選びください〜」


今日のハイスコアの凄さを痛感したあと、私たちは乗り物から降り、出口への道を歩いていた。その道中に参加賞が貰えるらしい。


これまたバルーンアートで作られた二つの箱の中には参加賞が二種類入っていた。バルーンアートミニキットか小さめのアクリルキーホルダーのどちらか。


立ち止まって考えたい気もするがここで止まっていては他の人の迷惑となってしまう。私は目の前にあったアクリルキーホルダーを手に取り、そのままセンパイと出口へと向かう。センパイも参加賞を取ったらしく、右手に何かを持っていた。


センパイはどっちにしたんだろう…?


私はそんな事を思いながら少し道の端により、センパイの方を振り向いた。


「センパイ! センパイは何にしたんですか?」


「僕はバルーンアートキットにしましたよ。小さいですけどバルーンアートを作るのには充分だと思いまして」


「確かにセンパイは作れますし、そっちの方がいいかもですね!」


「結城さんは?」


「私はアクリルキーホルダーです!いくつか種類があったみたいなんですけど、手に取ったのにしちゃいました」


そう言ってチラッ、と自分が手に取ったアクリルキーホルダーを確認する。そこにはピンクのウサギのバルーンアートのイラストがあった。


「あっ! 当たりかもしれないです、ほら!」


センパイに見せるとセンパイも首を縦に振ってくれた。


「そうですね。結城さんみたいです」


「えっ…! うさぎちゃんが、ですか?」


「いえ。寂しがり屋なところが」


「………私、寂しがり屋ですか?」


「寂しがり屋でないとしたら何故いつも授業中以外、僕の元へやって来るのでしょう?」


手で口元を隠しながらセンパイはそう言ってクスクスと笑う。


くっそう! バレてやがったのか! 最近は全然バレてないと思ってたのに…!


「バレていますよ、結城さん」


「うぅ…っ」


バツが悪くなり、私はそっぽを向く。しかしそれだけで私が毎回センパイの元へひっそりと行っていたのは隠せないらしく。


「結城さん」


センパイに名前を呼ばれてしまった。


「な、なんでしょう…」


「こちらを向いてください」


「……………」


チラリ、とセンパイの方を向くともうクスクスとは笑っていなかった。


「怒ってはいませんよ。結城さんが僕の元へ来てくれるのは嬉しい事ですから」


「…………………」


「結城さん? 急に顔を隠してどうかしたんですか?」


「急なデレやめてください。死んじゃいます」


「おやおや。デレたつもりはなかったんですが…」



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