「センパイ、嘘やめてください!」


「まぁ…、何はともあれ…」


私はそう言いながらズズっ、とジュースを飲む。

さっきパレードが終わり、喉が渇いた私は(未だに若干生ゴミを見るかのような目で私を見つめる)センパイに飲み物を飲もう、と誘った。


どこで飲もうかとマップを見て悩んでいると視界にドリンクを売っている出店のようなものが映り、そこで一本ずつ買う事にしたが、ここでもセンパイが出そうとしたので慌てて止めた。


危ない危ない。まさかここまでしてくれるとは。さすがに一本200円のジュースくらい2人分買えるって!!!


なんて思いながら私は計二本、センパイと私の分のジュースを買い(しかしそのせいで小銭は残り17円となってしまった)、近くのベンチに座って今に至る、というわけだ。


ストローから口に入ってくる飲み物は甘く、シュワシュワとしているコーラだ。あまり飲まないが全く飲まないというわけでもないコーラだがセンパイと夢の国に来ているせいか、めちゃくちゃ美味しい。


「“何はともあれ”……なんですか?」


と、ここで私はセンパイに話しかけている途中だと思い出す。


「失礼しました。…あの、行きたいところがありまして」


「行きたいところ、ですか?」


「はい! さっきマップを見ている時に気づいたんですけど…」


私がそう言うとセンパイはパサっ、とマップを広げてくれた。そのマップを軽く見回してお目当ての記事を見つける。


「あった! ここです!」


ビシッと私が指さしたのは参加系アトラクション。ネズミーやその仲間たちと遊ぶシューティングゲームで、スコアによって参加賞や特別賞が貰えるらしい。


参加賞ってなんだろ…。ポケットティッシュかな…?


「いいですね。結城さんはシューティングゲームが得意なんですか?」


「いや〜、得意っていうか…。最近FPS(※)をやり始めてて…。だから行けるかな〜? って。だから初心者です!」


「そうでしたか。まぁFPSに比べてシューティングゲームは自分は動きませんし、簡単だと思いますよ」


「夢の国にあるのにFPSみたいなゲームあったら嫌ですもんね〜」


「そうですね」


なんて会話をしながらジュースを飲む。良かった、生ゴミを見るかのような目で見つめられる事はなくなった。ナイス! シューティングゲーム!!


「それでは飲み終わったら行きましょうか」


「わっかりましたぁ!」


そう言ってスゴゴゴコッ、と残りのコーラを飲み干す。センパイをチラリ、と見るとセンパイも飲み終わっているようで私の方を見ていた。


「飲み終わりました?」


「えぇ。…ふふっ。結城さん、凄い顔でしたね」


「え! そんな酷い顔でしたか?!」


「嘘です」


「まじ紛らわしい嘘やめてくれます??」




※FPS… “ファーストパーソン・シューティング”の略。一人称視点のシューティングゲームの事。

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