「センパイ、なんでですかあ!」


「いい感じに撮れましたね!」


携帯の画面には私とセンパイ。そしてちょっと遠目にパレードの船。他に邪魔する人や物もなくスッキリとした写真だ。


うん、いい感じに撮れてる。よかった。


そんな事を思いながら携帯を仕舞い、パレードの方を見る。だんだんとジングルベルが流れてくると同時に船も流れてきている。


「センパイ、センパイ! ほら、凄くないですか? あんなに大きいクリスマスツリーなのにちゃんと船に乗っているんですよ!」


「そうですね」


「どうやってるんでしょうかね? あんなに重そうなのに…」


私がそうセンパイに尋ねるとセンパイはサラリと答えを口にした。


「そりゃ、魔法ですよ」


「ま…、魔法……!」


「はい、魔法です」


なんの屈託もない笑顔でセンパイはそう答えた。センパイが言うなら魔法なのだろう。ほら、この世にはうん歳までチョメチョメしないと魔法使いになるって噂もあるくらいだし。


「魔法ですねっっ!!」


「凄いですね」


「はいっ!!」


そっか〜〜! 魔法か〜〜、と思いながら私は再び船へと視線を移す。もう船は近くまで来ていてなかなか迫力があった。


近くに来てわかったのだが、クリスマスツリーに飾ってあるオーナメントはキラキラと輝いている。船に付けられているまるでツリーに飾るモールのようなリボンも光っていて更にクリスマス感が漂う。


キャストさんやネズミーたちの服装はサンタさんに統一されていて、それぞれ赤や緑、ピンク、青、黄色…といった具合に色々な色のサンタさんがいる。


「わぁ! クリスマス感満載ですね!!」


「えぇ、そうですね」


私がキャッキャッと楽しんでいると少し離れた所にいる子供連れの親子が目に入る。


「おとーさん! おおきいね!」


「そうだね〜、大きいね」


「くらりすますだね!」


「うん。クリスマスだね〜。ほら、写真撮るからお母さんと並んで」


「はぁい!」


口足らずな子供が言う言葉は何処か私が言った言葉と似ていた。


うっ、精神年齢が子供なのか…? なんて少し落ち込むとそんな私を見たセンパイがクスリと笑った。


「ふふっ。僕、今の結城さんが考えている事、何となく分かります…、ふふっ」


「え…っ。顔に出てましたか?」


「えぇ。そりゃもちろん…ふふっ」


あらやだっ。そんなに顔に出てたの?! 気をつけるようにしないと…、と頬を上下左右にぐにぐにと揉み込む。するとその行動を見たセンパイが更に笑う。


「ふっふふ…っ。結城さん、面白いですね…っ、ふふっ」


口元に手をかざして口元を隠しながらセンパイは笑う。


「もぉ! なんで笑うんですかぁ!」



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