「センパイ、写真撮りましょ!」


「ちなみに…、前回はどれくらい赤点だったんですか?」


「黙秘で!」


「沢山あったんですね…」


遠い目で私を見る。その視線に私はニッコリと笑うだけで答える。


センパイは頭がいいらしいから赤点とか体験ないんだろうなぁ…。そんなセンパイに教えてもらうという事は! もう赤点の心配がないという事。前回までのテストは恋人じゃなかったゆえ、センパイの邪魔にならないようにとお願いしてなかったもんなぁ…。


そんな事を思っていると遠くの方からクリスマスに流れるジングルベルが流れてきた。


「あれ? もしかしてパレード始まってますかね?」


私はタタタッ、と川の手すりまで駆け寄り、音楽が聞こえる方角を見る。しかし目的の物は見えず。


「船で来るんですよね? 川の上ですし…」


「そうですね。川の上ですので船かと」


「まだですかね〜?」


川に落ちない程度に手すりに体重を込める。すると段々と音楽が大きくなってきて私の視界に大きなクリスマスツリーが現れた。


………ん? 大きなクリスマスツリー??


あまりの驚きに目をぱちぱちとするが、やはりクリスマスツリーである。大きなクリスマスツリーが船に乗っているのだ。


水の上という事もあってかグラグラと左右に揺れている。その度に見た事もない大きなオーナメントも揺れる。プレゼントのオーナメントに雪だるまオーナメント、サンタさんのオーナメントもある。


クリスマスカラーである赤と緑に装飾された船の上にはクリスマスツリーの他にもパレードを盛り上げるキャストさんが何人か乗っていた。それにネズミーやネズムー、そしてネズミーの仲間たちも。


「楽しそうですね! センパイ!」


キャッキャッ、と子供のようにはしゃぎながら私は一歩後ろにいるセンパイに声をかける。


「えぇ。楽しそうですね」


「お昼だからどんなパレードなのかな? って思ってたんですけど、音のパレードだったんですね! なんだが楽しくなってきました!」


「ふふ。それは良かったです。結城さん、写真はいいんですか?」


「あっ! 忘れてました!」


あまりの楽しさに写真を忘れてしまっていた。写真が全てではないが、ひとつの思い出として写真は大切だ。


「センパイ! センパイ! 船と一緒に撮りましょうよ!」


まだ少し遠目に映るほどの船だが写真を撮るのには申し分ない大きさである。逆にこれ以上大きくなってしまうと写真に収まりきらない可能性がある。


「えぇ、いいですよ」


カメラアプリを内カメにしてセンパイと並んで写真を撮る。


「ハイ! チーズ!」


パシャッ。



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