「センパイ、なぜですか…?」


「ふふ、結城さんは毎年クリスマスを楽しみにしているイメージですね」


「もちろんですよ! 毎年家族とですが、今年はセンパイと過ごしたいです!!」


キラキラとした目でセンパイを見つめるとセンパイは「それなんですが」と口を開いた。雰囲気からして私にとって良くない事は一目瞭然であった。


「それなんですが、おそらく今年も…」


「こ…“今年も”……なんですか?」


「今年も美術部でパーティするかもしれないんですよね」


「えっ! 美術部でパーティしてたんですか?」


「えぇ。清水部長が去年、『やろう!』と言いだしまして…」


なるほど。なんとなく想像はつく。あの部長の事だからきっと唐突に言い出したのだろう。そして準備やら何やら全部センパイがやったんだろうなぁ…、可哀想に。


「ただ今年は清水部長が受験生なので…、やるんでしょうか…」


「私的にはイブの日なら参加したいなって思いますけどね」


イブの日は部活のみんなと過ごし、そしてクリスマス当日はセンパイと過ごす。なかなかいい流れではないだろうか。


「クリスマス当日はセンパイと過ごすんです!」


「いいですね、それ」


センパイはそう言ってニコッ、と微笑んだ。

クリスマスにセンパイと過ごす了承も得た事だし、これからのバイトのお金はその時のプレゼントにつぎ込もう。


次は今回みたいに慌てないようにしっかりと貯金をしておかなければ。


あ。そういえばバイト先にお土産買っていかないと。それにママたちとえみ、それに部長にも買っていってあげよう。……お金足りるかな……。


なんて思いながら遠い目で川の方を見つめるとセンパイはポツリ、と呟いた。


「ですがその前に期末試験ですね」


「……………!!!」


「なんですか、その“忘れていました”っていう顔は…っ、ふふ…っ」


「え! クリスマス前に期末テストあるんですか?!」


「えぇ。クリスマス前に。正しくは冬休みに入る前に」


「えぇっと…、ちなみに…赤点を取ると…?」


「もちろん追試ですね」


「ジーーーザスッ!!!」


私は頭を抱えてその場に蹲った。


あれ?!?! 私、中間テストの結果…どうだったんだっけ?! あまりにも悲惨で頭から消去してたよ!! やばいやばいやばい!! なんで頭から消去してたんだよ!! 私のバカ!!!!!


「……もし大変なようでしたら教えましょうか…?」


「セェンパァイ…ッ!」


私はパァァァッ、と顔を明るくして立ち上がり、センパイの両手を握った。


「ありがとうございます!!これで赤点回避ですね!!」


「いや…、まだ確定していませんが…」


「確定してます!!」


「そうなんですね…」


センパイよ、なぜそんな困ったような笑顔でこちらを見るのですか……。



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