「真斗、ごめん」
「…………………」
「……優良、大丈夫?」
「………うん」
「本当に?」
「………うん」
「今何時?」
「………うん」
「ダメじゃん」
バシッ! と真斗に背中を叩かれる。それもかなりの力で。
あの、私女なんスけど…。
そう思い、携帯から顔を上げる。携帯の画面には既読すら付いたが返信はきていない。悲しみである。
「痛い……」
「優良が適当な返事するからだよ」
「…………ごめん」
「………………」
真斗は頬杖をつきながらこちらを見つめる。しかしそれだけで何も言わない。
スタッフ控え室の時計がチクタクと音が響く。時刻は17時48分。あと少しでバイトが始まってしまう。
そんな中、じぃっと私を見つめる真斗が口を開いた。
「返信きた?」
「きてない」
「そ」
素っ気なく答えた私に真斗も素っ気なく返す。
「優良」
真斗は机をさはんで私の正面の席に座っているため、ふと顔をあげれば真剣な表情でこちらを見つめてくる真斗がいた。
「…………ごめん」
「え?」
「俺が行ったから」
「うん。そうだね」
「いや、それでも俺が行かなかったら………。え? 今なんて?」
「真斗が来たからだよねって。真斗が来なければバイトの話もできたし、何よりあんな風にはならなかったんだけど?」
目をぱちくりする真斗に私はさらに続ける。
「どーしてくれんの! もしこれで破局になったら!! 真斗! アンタ一生恨むからね!」
「え…っと…」
「もういい! 先に行ってる!」
私の完全八つ当たりな態度にタジタジになる真斗にそう言い、控え室を出てやや乱暴に扉を閉めた。
……いや、八つ当たりって知ってるけどさ。
控え室を出て、一人。壁にもたれかかりながら私は手の中にある携帯を見つめる。依然、センパイからの返信はなし。
「………はぁ…」
今夜、ちゃんと電話できるといいんだけど…。
それよりも今の私は仕事をきちんとこなさなければならない。携帯を仕舞い、気合を入れるために両頬をやや強めに叩く。
「…………よしっ」
私はそう呟いてタイムカードを押すために事務室へと向かう。
事務室に行くと私よりも早くに入っていた店長に出くわした。
「店長、おはようございます」
「結城さん、おはようございます。今日はお会計を教えてもらいたかったんですが、飲み放題コースが入ってしまって…」
「はい。提供ならもうある程度慣れたので大丈夫です! お会計は時間のある時に真斗…じゃなくて…、音無さんに教えてもらいます!」
「すみません。今日もよろしくお願いします」
そうだ。今日は飲み放題コースがあったんだった。あとで何時間コースか確認しなきゃ…。
そう思っていると後ろから真斗がやってきた。
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