「真斗、大人になったね」
「おはようございます、店長」
「音無くん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「はい」
真斗はそう言うとすっかり仕事モードに切り替えて私の横を通り過ぎてタイムカードを押す。
「それじゃ、優良。優良はコース初めてだったよね。コース料理の仕上げをしたいからついてきて」
「う、うん…」
なんだか真斗が気持ちの切り替えができるなんて思ってもいなかった。大人になったんだなぁ。
そんな事を思いながら真斗の後ろを歩いてキッチンへと向かう。
「わぁ…」
キッチンにはカウンターにコースの料理が所狭しと並べられていた。
どうやら前の時間にシフトに入っていた人が作ってくれていたようだ。ありがとうございます。
しかしどれも仕上げが終わっていない。サラダならまだドレッシングやクルトンが入っていないし、ピザならまだ電子レンジに入れていない。
「まだコースの人は来ていないよね? 今から仕上げを少しずつ始めるから…、優良クルトン取って」
「うっす」
「何その返事」なんて笑われながら私は真斗にクルトンが入った袋を手渡す。その間に真斗は片手にビニール手袋をはめて袋を受け取る。
「こうして…、大体10個くらい。まぁ、見栄えば綺麗だったらいいから。適当に散りばめてもらっていいかな?」
そう言って私にもビニール手袋を差し出す真斗。
私は頷いてビニール手袋を受け取り、もう片方のサラダにクルトンを適当に、でも見栄えが良くなるように散りばめる。
「次はポテトなんだけど…」
真斗がそう言いかけた時だった。受付の方で呼び出しベルが鳴る。
「もう来たのかな…。優良、俺受付するから。優良はポテトの袋、三つ出しておいて」
「分かった」
私の返事に真斗は満足したのかふっ、と笑って受付へと向かった。
その後はもちろん真斗に言われた通りポテトの袋を三つ取り出してすぐに揚げられるように準備をする。
それから少し経って真斗が戻ってきた。
「おかえり。コースの人?」
「そう。もう部屋に入ったから今から三時間ね」
「おっけー」
「で、もう最初のドリンクは聞いたから。優良、作れる?」
「ある程度は作れるから大丈夫!」
「分かった。生ビール三つにジントニック一つ、ハイボール一つね。分からなかったらすぐに聞いて」
「大丈夫! 全部わかるよ」
「じゃ頼んだ」
「うん」
私はそう言ってドリンクを作り始める。
まず最初はジントニックから。ジンを人差し指の横幅程度まで入れて、トニックウォーターを規定の量まで入れる。それからスライスライムを入れたら出来上がり。
ハイボールはウィスキーをジンと同じように人差し指の横幅程度まで入れて、炭酸水を規定の量まで入れる。これで出来上がりだ。
最後に生ビール。これは生ビールサーバーから出る生ビールをグラスに注ぐだけ。
すぐにドリンクが出来上がった。
「提供行ってくるね〜」
「うん、気をつけて」
「おっけー」
私はそう言ってドリンクをトレンチに載せ、片手で持ち、キッチンを出る。
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