「センパイ、話を聞いてください」


「バイト行くの面倒だなぁ…」


「いや、自分で決めたんだから頑張れよ」


「ぐうの音も出ねぇ」


えみの言葉に私は引き笑いをしながらバッグの中に教科書を仕舞い、ため息を吐いた。


「はぁ…」


「早よ行けよ」


「はいはい〜。えみは辛辣だなぁ〜…」


こちらを見ず手を振るえみに私はそう言い、私は教室を出た。


「誰? あの校門にいる人〜!」


「うわっ、顔面偏差値たか〜!」


「ね〜! やばめだよね!」


…? 誰か別の高校の人がきているのかな…? まぁどんなに顔面偏差値高くてもセンパイには勝てないけどね〜!


なんて思いながら私は下駄箱まで行く。

そこでセンパイに一応連絡を入れようと携帯を開いたその時だった。


「結城さん」


「え?」


聞き慣れた大好きな声に振り返るとそこにはセンパイがいた。


え? (二回目)


「帰りましょうか」


「え?」(三回目)


「一緒に帰るのなんて久々ですね」


「あの、センパイ。今日は…」


「予定があるのでしょう? 知っていますよ」


「それでもいいんですか? 私早歩きしますよ?」


「えぇ。構いませんよ」


「それならいいですけど」


ラッキーーー!!!!! センパイと帰れないと思ってたからこのイベントは嬉しすぎる!! え? センパイと一緒に帰れるとか幸せすぎだろ!! 今、再実感しました。


「それでは行きましょうか」


「はい!」


私は持っていた携帯をバッグの中に仕舞い、先を行くセンパイの後をついて行く。隣に陣取り、幸せの笑みを浮かべた。


「なんだか久々な気がしますね! センパイと帰るの!」


「そうですね。最近は結城さんの予定があり、一緒に帰れませんでしたからね」


「あはは…すみません。実はその予定っていうのが…」


「おや?」


バイトの話をしようと口を開いた時だった。センパイはある一点を見つめ、そう言って足を止めた。


「…?」


センパイの行動に疑問を持ち、センパイの見つめる場所─校門─を見る。


「え?」


数人の女子生徒に囲まれている別の制服を来た男子生徒。染めた髪にピアス。

まさか、と血の気が引くのが分かる。


「ねぇ! 誰待ってるの?」


「何年生? どこ高?」


「いや、俺は……」


その人物は少し困ったように眉を八の字にしてそう言い、こちらを見た。


バチッ、と視線が合う。


「あ」


「優良!」


「へぇ…」


「最悪」と言いたげな表情を浮かべる私に、満面の笑みを浮かべる真斗。それから「これから地球でも滅ぼすんですか?」と聞きなくなるほどの表情をしているセンパイ。


浮気なんてした事ないけど、きっとバレたらこんな感じなんだろうなぁ、と私は今の現状から現実逃避し始める。


「結城さん?」


「あ、はは…。これはですね…」


しかしセンパイは現実逃避なんてさせてくれなかった。



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