「センパイ、もうやめたいです」
「そういえば結城さん」
「なんでしょ?」
「今日も一緒に帰れないのですか?」
「あ〜…、それですか…」
お昼休み。じゅーーっ、とストローでアイスティーを飲みながら私は答えにくそうに口を閉じる。
初バイトが終わり、数日が経った。
月末までの一週間でめちゃめちゃに稼ごうと思っていた私は全てにバイトを入れてしまっている。
そのせいで何が起こったか。
そう。センパイと放課後デートができないという現象だ。
センパイにはもうサプライズはできないため、バイトを始めた事を話してもいいとは思うのだが。
問題は真斗だ。
センパイの真斗への印象は最悪だろう。何せ、私のTシャツにオレンジジュースをかけ、あまつさえ私と付き合う宣言をしたのだから。
しかしここで言わなければ後々、面倒な事にならない、とも言いきれない。
「すみません、今月は全部早く帰らないといけなくて…」
「予定でもあるんですか?」
「はい。実は……」
私がそう言いかけた時だ。
「おぉ、長瀬! 探したぞ!」
センパイを呼ぶ声がし、振り返ると3年生の担任をしている先生がこちらへと歩いてきていた。
こちらの先生は私たちの担任であるカーティよりも歳上で、頭の方が禿げていらっしゃる苦労人なお方。
でもなんで3年生を担任している先生がセンパイに…?
「どうかされましたか?」
「清水について相談したい事があってな。今、時間いいか?」
あーー。なるほど。納得。理解した。
つまりこの先生は部長の担任の先生だったのか。それは苦労するわけだよ。
「僕はいいですけど…」
センパイはそう言いながらチラッ、と私の方を見た。きっと私の事を心配しているのだろう。
「私も大丈夫ですよ。どうぞ行ってきてください」
「すみません、ありがとうございます」
「すまないな。何せ緊急で…」
謝罪する二人に手を振りながら私はポツン、と一人。ベンチに残される。
「あ、言うの忘れちゃったな…」
まぁ、放課後にでも言うか…。
そんな事を思いながらまだ食べ終わっていないパンをひと口かじる。
一口、また一口とかじり、全部食べ終わったところで私はベンチに座ったまま背伸びをする。
今日も部活の後、バイトが入っている。なんともハードなシフトを出してしまったというものだ。
しかし私が無理をいってハードなシフトにしたため文句は言えない。
一日四時間。それをあと数日。
ボックスの重さに加え、トレンチの練習で腕や腰は筋肉痛になってしまっていた。
これは今夜も湿布を貼らないといけないかな…、なんて思っているとピロン、と携帯が鳴った。
「なんだろ」
見てみるとメッセージがきていた。アプリを開いてそのメッセージを確認する。
「うわ」
《明日、18:00から飲み放題コース5名入りました》
待って。明日って、確か私18時から入ってなかった???
「………………バイト、やめようかな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます