「センパイ、私頑張ります!!」


「それでさ〜、記念日、えみはどうした方がいいと思う?」


『心底どうでもいい』


「えっ」


電話越しに聞こえるえみの冷たい回答に私は思わず短い声を上げてしまった。


だってそう言われるなんて思ってもいなかったから。えみったら酷い。ぴえん。


なんて思っているのが電話越しにも伝わったのか、えみはため息を吐いた。


『それじゃ、プレゼントとかどう?』


「プレゼント?」


『先輩にプレゼントだよ』


「あぁ! 結婚指輪とか!」


『いきなり重ぇよ』


えみはそう言うとまたため息を吐いた。


あれ? 私と話してるとえみ、よくため息吐かない?? 気の所為?


えみと無難なプレゼントの話をしながらも私は結婚指輪、ではなくペアリングを検索する。


「うん〜…、やっぱり二、三万なのか〜……」


『ん? 何の話?』


「えっ、あぁ。ペアリング」


『おい、さっきまで新作の靴の話してただろ。なんでペアリングの話になってんだよ! まさかプレゼント、まじで指輪にするの?』


「………えぇ〜。だって…可愛いのあるし……」


そう言いながらペアリングのページをスクロールしながら見続ける。


シンプルなものからゴージャスなものまである。種類もゴールドやピンクゴールド、イエローゴールドまである。


ここまでくると頭が回る、というものだ。


しかし種類が多いのに比べ、値段は二万から三万ほどのものが多い。


今見てるこのブランドは近くのショッピングモールにあった気がする…。えみと一緒に行こうかな…。


『優良、聞いてる?』


「あー、うん。あのさ…」


『何?』


「今度、ショッピングモール行かない?」


『なんで? いいけど…』


「いや〜、プレゼントはペアリングにしようと思って!」


『いやいやいや。ブレスレットとかは? って言ったじゃん』


「いや。プレゼントはペアリングだね。決定!」


私はそう言い、可愛いと思ったペアリングのページをスクリーンショットしていく。何個か候補ができたため、今度えみにも選んでもらおう。


『もしペアリングならさ…』


「うん?」


『足りるの?』


「愛?」


『違ぇよ。お金だよ』


「……………………あ」


私は急いで机の引き出しにしまっておいた通帳を見返す。最近はえみとも遊んでいないし(主にセンパイとデートをしているため)、お金はあるハ…………………。


残高、5967円


ズ、だった…………。


どんなに見ても5967円。上から見ても下から見ても横から見ても5967円。


「…………えみ」


『何?』


「私!!! バイトする!!!!」


『三日でクビになるに賭けていい?』



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