「センパイ、スパダリ〜ィ!」


「じゃー俺、空気の読める先輩なんでさっさと帰るね〜」


「早く帰ろください」と言いたいところをグッ、と堪えて私は笑顔で美術室を出ていく部長を見送る。


そしてまたセンパイと二人きりになる。


「それでは帰りましょうか」


「はい!」


私はそう言ってセンパイと一緒に美術室を出て、鍵を職員室に返す。


本来なら部長のする事だがあの部長はしない。なぜか。それは部活が終わると我先にと帰るからだ。


「なんでセンパイが部長じゃなかったんですか…?」


家までの道のりをセンパイと歩きながら私はそう尋ねた。


「どうしたんですか。藪から棒に」


センパイは驚いたようにそう聞いたが部長とセンパイの関係性を見れば誰もが思うだろう。


なぜあんな(ケチョンケチョンな)人が部長なのか、と。


「前部長はなぜ今の部長を部長にする事を許したんですか?」


「他に立候補者がいなかったんですよ。それで」


「なるほど…。センパイは前部長に指名されたんですか?」


「いえ。僕は清水部長の推薦で副部長になりまりた」


「仲良かったんですか?」


「いえ」


おぉ、すげぇ食い気味で返答するじゃん。


と、私の質問に即答したセンパイに少し驚きながら「へぇ…」と声を漏らす。


「なぜあまり…、というか話した事のない僕を推薦したのかは未だ分かりませんね」


「部長の事だから“楽できそー”とかの理由ですって、絶対」


「そうですかね…?」


「部長は“絶対にサボるマン”なんで」


「ふふ。なんですか、そのあだ名」


「面白いでしょう?今考えました!」


「えぇ。とっても」


そんな話をしているとあっという間に私の家に着いてしまった。


ピタッ、と立ち止まる私とセンパイ。もう少し一緒にいたいところだが、時間ももう遅い(女顔先輩を待っていたせいで)。


「センパイ。今日もありがとうございました」


私が笑顔を浮かべてそう言うとセンパイは少し眉を顰めた。


「いえ。本当は記念日の話をしようと思ったのですが…」


「あっ。そうですよね…。まだ話してなかったですもんね」


「えぇ。また今度にしましょうか」


「分かりました! その間にえみにどんな感じにすればいいのかとか聞いておきます!」


「ふふ。それではよろしくお願いしますね」


「了解です!」


私はそう言うとセンパイが見守る中、玄関を開けて家へと入る。しばらくしてガチャッ、と玄関を少しだけ開けて外を見ると少し先に自宅へと帰っていくセンパイが見える。


いつもセンパイは私が家に入るまで見送ってくれる。


「やっぱり私の彼氏、スパダリだよな…」


そんな素敵な彼氏さんのためにも記念日は最高の日にしなくちゃ。



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