「センパイ、部長が失礼です!」
「だって俺のいない時におも…、仲良さそうにしてたからさ〜」
「今、“面白そう”って言いかけましたよね?」
「な、なんの事だか〜?」
そう言ってやや引き攣った笑いを浮かべる部長に私はため息を吐いてなぜ部活が終わる前に帰ってこなかったのかを聞いた。
すると部長はなんの悪びれる様子もなく(また抓ってやろうかと思った)、「あー、それね」と話し始めた。
「担任の先生に捕まっちゃって。いや〜、困るよね」
「また授業に出ていなかったんですか? この前はきちんと出ている、と聞いていましたが」
センパイは部長の事をよく知っているだろう、という理由から部長の担任の先生によく部長が授業に出ない理由を相談されているらしい。
そしてついこの前、センパイは担任の先生から部長が授業に出ている、と報告を受けたとセンパイから聞いている。
というか部長の担任の先生が不憫でならない。こんな問題児を抱えているなんて。
「あ〜、まぁ…。進路、の事で」
部長は少し言いづらそうにそう言った。
部長の進路。
親からは美術大学に行け、と言われているらしい。そして部長自身は有名大学で偏差値平均が75と高い七夜大学を目指している。
ただ親の意見に逆らいたいからではなく、“宇宙科学学部”という学部に入りたいようだ。
その話をこの前、部長から聞いた私は直ぐに納得し、「あー…」と消えるように声を漏らした。
「進路ですか。部長もそろそろ受験ですもんね」
「一月中旬までに願書出さなきゃだから…」
「なるほど。それなら仕方がありませんね。部長はトラブルメーカーですし、小規模な二者面談…、といったところでしようか」
「え、俺、トラブルメーカーなの?」
そう驚く部長を横目に私は「早く帰りましょう」とバッグを手に取り、立ち上がる。
「そうですね。結城さんと一緒に帰る約束もしていますし」
「なにそれ! 面白そう! 俺も混ぜて!」
「清水部長、その案は却下です」
ピシャリ、とセンパイがそう言うと部長は玩具を買ってもらえなかった子供のような表情を浮かべた。
いや、当たり前だろ!!! と言いたげな私に部長はぴえんの瞳でこちらを見てきた。
「………なんですか」
「お願い」
「そんなうるうるした目をしてもダメですよ。どうせ“面白そう”って理由からなんでしょう?」
私がそう言うと部長は「ギクッ」と声を漏らした。
「そもそも面白くないので。帰りはおひとりでどうぞ」
私がそう言うと部長は「ちぇーっ」と言って机越しにバッグを取り、残念そうな表情をした。
「面白そうだと思ったのになぁ」
「ほらやっぱり」
「優良ちゃんいるだけで面白いのになぁ」
「どういう意味ですか? こら」
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