「センパイ、ありがとうございます!」
「それで、なにを考えていたんですか?」
「…………それは…」
私はまた俯く。
言えないほど後ろめたいものでもないが、言えるほど図々しくもないのだ、私は。
「言ったらセンパイに迷惑がかかるかもしれません」
「迷惑だなんて…。そんな事ないですよ」
「まだ何も言っていないのに“迷惑じゃない”って分かるんですか?」
私はそう言って顔を上げた。
少し意地悪な言い方になってしまったが、センパイはいや顔ひとつせずに淡々と答えた。
「それは結城さんの物差しで測った場合の“迷惑”でしょう? 僕の物差しはあいにく、余程の事でないと“迷惑”だと感じないんですよ」
「それなら…」と私はセンパイにさっき思っていた事を伝える事にした。
「センパイ、来年には受験生じゃないですか」
「そうですね」
「だから一緒にいられる時間が少なくなったりするのかな、って」
「……………」
「じゅ、受験の大変さは高校受験ですが、体験しますし…、無理に一緒にいたいとは思っていなく───」
その瞬間。
カタン、と席に立ったセンパイに顎を軽く持ち上げられ、そのままキスをした。
え。
なんの事か一瞬、分からなくなり目を見開く私にセンパイはニコニコと笑いながら口を開いた。
「すみません、急に」
「いえ……。………え?」
「ふふ。結城さんがとても愛らしかったので。つい」
いや、何が「つい」、ですか!!! こちとやら心臓バックバックですよ!!! 心拍数急上昇で死にますよ?!?!?!
なんて事は言えず、私は真っ赤であろう顔を隠すようにセンパイからゆっくりと視線を逸らした。
「大丈夫ですよ」
視線を逸らすとセンパイはそう言ってきた。
「……センパイ」
私がまたセンパイの方へ顔を向けるとセンパイはニコニコと笑顔を浮かべている。迷惑、ではなかったのだろうか、と心配していたのが吹き飛んだ気がした。
「迷惑ではないです。僕も結城さんと一緒にいたいので」
「………センパイ……!」
「愛してますよ」
「…センパイ………、って。え?」
「いや〜、アツアツだね〜」
なんだかセンパイの声が変だな、と顔を横に向けるとそこには部長が机に頬杖をつきながらニコニコと気味の悪い笑顔を浮かべていた。
「部長?! いつからそこに! ってか! センパイの真似しないでくれません?!」
「いや〜、俺が入ってきたら栄一くんが愛の告白してたからさ〜。つい」
「何が“つい”ですか! ふざけんなですよ!」
「優良ちゃん、それ敬語じゃないよ。って! いててて! 痛い!! 痛いって! 腕抓らないでよ!」
「変な事したからです!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます