【続編あり】｢センパイ、遊んでください！！｣【完結】

｢センパイ、やっぱりやめましょう｣

｢センパイ！ もう女顔先輩の仕事はいいんですか？｣

パァァァッ、と顔を輝かせてそう言うとセンパイは｢はい｣と答えてさっきまで女顔先輩が座っていた席に座る。

｢簡単なものでしたので直ぐに終わって良かったです｣

｢簡単なものなら部長がやれ！ って感じですけどね！｣

そう呟きながら私はサッサッ、と鉛筆を動かして仕上げに取り掛かる。それを見たセンパイはジィっ、とこちらを見つめてきた。

｢……………｣

｢……………｣

｢…………あの、センパイ…｣

｢なんでしょうか｣

｢そんなに見られていたら描きづらいっていうか…なんていうか…｣

チラリ、とセンパイを見ると｢おや。そうでしたか？｣なんて言いながらもこちらを見つめてくる。これは確信犯である。

｢結城さんの絵が素晴らしくてつい魅入ってしまいました｣

｢そんな…、ただ手を動かして描いていただけですので…｣

｢それでも素晴らしい絵を描くんですから結城さんは素晴らしいですよ｣

今日のセンパイはどうしたのだろうか。

これでもか！ というほど褒めてくるではないか。きっといい事があったのだろう。

｢センパイは描かないんですか？｣

｢僕ですか？｣

｢はい！｣

｢そうですね…。近々コンクールはありませんし…。最近描いていなかったので手慣らしで描くのもいいかもしれませんね｣

センパイはそう言うとバッグの中からスケッチブックを取り出して机の上に置いた。

それから鉛筆も取り出し、何も描いていないページを開き、少し考えるように首を捻った。

｢さて。何を描きましょうか…｣

｢センパイの好きなもの、とか…｣

｢“好きなもの”、ですか…｣

私とか、私とか、私とか！ と言いたいのを抑えながら私は期待の眼差しでセンパイを見る。

するとセンパイはその意志をくみ取ったのか笑ってこう言った。

｢それでは結城さんを描きましょうか｣

｢えっ、本当にいいんですか？！｣

｢えぇ。そのような顔をされていましたから｣

｢あー…、でも…少し恥ずかしい気が…｣

そもそもモデルになるにはじっ、と見られて動いてはいけない。とてもではないが恥ずかしい事である。

｢ふふ。結城さんはいつも僕を見ているのに自分の事となると“恥ずかしい”んですね｣

｢うっ、バレてた…｣

｢いつものお返しです。モデルになっていただけまよね？｣

｢よ、喜んで…｣

少しだけ意地悪を言うセンパイに負け、結局私はモデルをする事になってしまった。

センパイに対して正面を向き、私はじっと固まる。

｢ふふ。そんなに硬くならなくてもいいんでふよ｣

｢いや…緊張で…｣

｢初めてではないでしょう？｣

｢そりゃ何回か美術部でやりましたけど…｣

｢なら大丈夫ですね｣

｢どんな理論ですか！！｣