「センパイ、部長最低なんですけど」
「こんにちは〜」
放課後。私は美術室の扉を開けてそう言うとちらほらと返事が返ってくる。
私も何か作品を作ろうかな、と席に着いた時だった。部員のみんなが各々の作品を完成させようとしている真剣な雰囲気とは対象的な声が聞こえた。
「お疲れ〜、優良ちゃん」
そう言って流れるように私の席の隣に座る(一応この部の)部長、
「お疲れ様です」
そんな部長を視界に入れないように私はバッグからスケッチブックを取り出し、ページをめくる。
「ねぇ今日は何書くの〜?」
「それでは私を邪魔しようとしている女顔先輩の全身像でも書きますかね」
「冗談はよしてよ。モデルってほんと恥ずかしいんだから」
「冗談じゃないですよ。ほら、みなさん! 部長がモデルしてくれるらしいですよ〜」
「優良ちゃん?! なんて事言ってんの! 俺はしないからね?! 部長命令!」
「職権乱用しないでもらえます?!」
ギャアギャアと部長と言い合いをするも他の部員は「またか…」みたいな顔をして作業に戻ってしまった。おいおい待て待て。
「ってか、
「センパイならさっきそこで会って、“部長の仕事をしていますね”って言ってましたよ」
“部長の”という言葉をやや強めに言って私はため息を吐く。こうしてまたセンパイとの時間が悪魔(女顔先輩)のせいでなくなるのである。
「いい加減仕事してください。部長して何ヶ月経つんですか」
「前の部長がちょっと早めに部活やめたから〜…、10ヶ月ぐらい?」
「あと2ヶ月で一年ですね! それでその10ヶ月間、ほとんど仕事をセンパイに押し付けていたんですね、最低です」
「優良ちゃん、笑顔からのゴミを見るような目が怖いよ……」
「“ゴミを見るような”じゃなくて“ゴミ”を見ているんです」
「わ〜、優良ちゃん、冗談が上手いね〜。あっ、俺用事思い出した! そうそう。教室に行かなきゃなんだよ〜! それじゃ!」
部長はわざとらしく早口でそう言うと私の隣から逃げるように美術室を出ていった。全く。これで少しは静かになるってもんだ。
「さて、と」
私は一呼吸置いて、筆箱からデッサン専用の2Bを取り出す。絵を描く序盤は2Bで描き出すといい、とネットに書いてあった。
何にしようかな、なんて思いながら私はサッサッ、と手の赴くままに鉛筆を動かす。
しばらくして絵が完成に近づき、2Hの鉛筆で仕上げていた時、後ろから声が聞こえた。
「やはり結城さんは天才肌ですね」
その声に振り返るとそのにはセンパイがニコニコと笑顔を浮かべて立っていた。
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